第13回東奥スポーツ賞

 第13回東奥スポーツ賞各賞の受賞者は、1団体5個人に決まった。東奥スポーツ大賞は、県人で初めてサッカーワールドカップ(W杯)に出場し、ロシア大会で日本代表の司令塔として2大会ぶりの決勝トーナメント進出に導いた柴崎岳さん(26)=野辺地町出身、青森山田出、ヘタフェ=に贈る。東奥スポーツ賞は、野辺地高校在学時、全国高校スキーや全日本スキー選手権の女子クロスカントリー競技で優勝した横濱汐莉さん(19)=野辺地高出、日大=、全国高校総体の陸上男子ハンマー投げを大会新記録で制した弘前実業高校3年の種市裕紀さん(18)、福井国体の陸上少年女子共通やU-18日本陸上競技選手権の女子やり投げで優勝した弘前中央高校3年の奈良岡翠蘭(みらん)さん(17)に贈呈する。東奥スポーツ功労賞は、年齢別マスターズ陸上国際大会に出場を続け、100メートルや200メートルなどで世界記録を樹立した田中博男さん(88)=青森市=、1918年の創設以来、全日本選手権や高校総体の優勝者を輩出するなど卓球競技の普及・強化に尽力している弘前卓球協会(山形一雄会長)に決定した。

東奥スポーツ大賞
 ▼柴崎岳さん ― W杯日本代表の司令塔
東奥スポーツ賞
 ▼距離スキー横濱汐莉さん ― 全日本制しW杯参戦
 ▼ハンマー投げ種市裕紀さん ― 最終投てき劇的逆転V
 ▼やり投げ奈良岡翠蘭さん ― 大舞台で自己ベスト
東奥スポーツ功労賞
 ▼マスターズ陸上田中博男さん ― 88歳「世界最速」
 ▼弘前卓球協会会長 山形一雄さん ― 「王国」青森支える

◆東奥スポーツ大賞

W杯の決勝トーナメント1回戦のベルギー戦でパスを出す柴崎岳さん=2018年7月2日、ロストフナドヌー
W杯1次リーグのポーランド戦で、レバンドフスキ(右)と競り合う柴崎さん=2018年6月28日、ボルゴグラード
地元・野辺地町にがい旋し、町民のサインの求めに応じる柴崎さん(左)=2018年7月13日
柴崎岳さん ― W杯日本代表の司令塔

 県人で初めて、世界が熱狂するサッカーの祭典・ワールドカップ(W杯)の舞台に立った。ただピッチに立っただけではない。司令塔として日本代表をけん引し、2大会ぶりに決勝トーナメント進出に導く活躍を見せ、存在感を示した。

 日本の4試合すべてで先発出場。1次リーグのセネガル戦では、同点ゴールの起点となる長友佑都選手へのロングパスを、決勝トーナメント1回戦のベルギー戦では、先取点を奪った原口元気選手への絶妙なスルーパスで相手チームに脅威を与えた。大柄とは言えない体格でも海外選手に当たり負けすることなく、献身的にピッチを駆け回る姿は、所属するスペイン1部リーグ・ヘタフェで日々しのぎを削っている強さを感じさせた。

 サッカー人生の原点は、地元野辺地町の野辺地サッカースポーツ少年団(SSS)から。小学校2年で入団し、6年のとき県少年サッカー大会を制覇。小学校の卒業アルバムに「Jリーガーになる夢を絶対かなえたい」とつづった。夢を追って青森山田中、青森山田高に進学。高2の全国高校選手権で準優勝を果たし、全国にその名を響かせた。

 卒業と同時に夢だったJ1の鹿島アントラーズに入団。そして、Jリーグのスケールにとどまらず、日本代表、海外移籍と飛躍し続けている。

 W杯後、地元に戻った際、「結果はベスト16。大会は楽しかったが、さらに上を目指すのであれば厳しい日程が待っている。W杯の厳しさを体験した」と何度も課題を口にした。

 今回果たせなかった8強の夢は、3年後、きっとかなえてくれるはずだ。

◆東奥スポーツ賞

全国高校スキーの女子5キロフリーで2位に約14秒差をつけて優勝した横濱汐莉さん=2018年2月5日、岐阜県郡上市
距離スキー横濱汐莉さん ― 全日本制しW杯参戦

 野辺地町馬門小学校6年生だった2012年1月、県ジュニア・クロスカントリースキー大会の女子3キロクラシカルで、女子選手では唯一の9分台を記録し優勝を飾った。クロスカントリー競技が盛んな野辺地町から、将来性豊かなヒロインが生まれた瞬間だった。

 野辺地中時代の3年間、県大会では向かうところ敵なし。3年生のとき念願だった全国中学スキーの3キロフリーを制し全国に名前が知れ渡った。野辺地高校に進学した2016年2月、大鰐町で開催された全国高校スキー(インターハイ)で、1年生ながら5キロフリーで初制覇。スケールの大きな滑りで2位以下を大きく引き離す快勝だった。翌年のインターハイは、世界ジュニア選手権の日本代表となり欠場したが、集大成の3年のインターハイは5キロフリーで再び優勝。高校生活最後の大会となった2018年3月の全日本スキー選手権も5キロフリー、30キロフリーで栄冠を勝ち取った。

 日大に進学した今シーズンは、日本代表としてワールドカップ(W杯)に本格参戦している。「世界の選手たちは強く、近くでその走りを見て勉強になる」と語り、「大学に入り、体の使い方を考えながら練習するようになった」と手応えを語った。

全国高校総体の男子ハンマー投げで65メートル98の大会新記録を出して優勝した種市裕紀さん=2018年8月2日、三重県
ハンマー投げ種市裕紀さん ― 最終投てき劇的逆転V

 弘前実業高で陸上競技に打ち込んで3年目。全国高校総体での大舞台で劇的優勝を果たした。男子ハンマー投げ決勝、最後の6投目。放たれたハンマーはぐんぐんと伸びていった。65メートル98をマーク、逆転で頂点に立った。自己ベストを5メートル以上更新し、しかも大会新記録を打ち立てての優勝。「信じられない」-涙があふれた。

 六戸町出身。六戸中時代は野球と陸上を掛け持ちしていた。中学3年のとき、高校の陸上指導者から素質が注目を集めた。「陸上やれば人生変わるぞ」と声をかけられた。練習環境が整った弘前実業高へ進むことを決意する。

 高校3年間を「人間の成長が著しい時期」と信じ、トレーニングに励んだ。自分の投げ方をつかみ始めたのは2年生の秋と遅めだったが「高校3年間で考えていたので、最後の高3で勝てればいい」と思っていた。

 その思いの通り、3年生になって調子を上げ、昨年5月の県春季陸上で狙っていた60メートル台に到達、60メートル56と県高校新記録と大会新記録をマークした。全国高校総体ではその記録を大幅に上回った。「下宿させてくれた親、仲間、監督に『ありがとう』と言いたい」。表彰式での表情は晴れやかだった。

陸上やり投げ競技で福井国体、U-18日本選手権を制して大輪の花を咲かせた奈良岡翠蘭さん
やり投げ奈良岡翠蘭さん ― 大舞台で自己ベスト

 昨年10月の福井国体。空中に放たれたやりは、これまで見たことがない大きな放物線を描いていた。到達したことがなかった50メートルを大きく超える53メートル38。「びっくり。優勝できるとは思わなかった」。ついにつかんだ全国タイトルに笑顔が輝いた。

 弘前大付属中時代は砲丸投げでジュニアオリンピック全国3位、県秋季陸上のやり投げでは大学生、高校生を抑えて頂点に立った。弘前中央高に入ってからも2016年の岩手国体少年女子B砲丸投げで8位入賞。17、18年と県高校総体でやり投げ、砲丸投げ、円盤投げを制する3冠を達成した。県内では投てき競技で無敵の強さを発揮した。

 18年シーズン、県高校総体やり投げでは1回目で大会新を出した。「自己ベストをどんどん更新していきたい」。しかし春から肘のけがに苦しんだ。夏の全国高校総体では状態が悪く12位と不本意な結果に終わっていた。高校最後の国体はけがも回復、中学時代から続けてきた砲丸投げを中心とした地道なトレーニングが花開いた。

 福井国体から11日後のU-18日本選手権に向け「入賞できたらうれしい」と話していた。結果はここでも51メートル65で優勝。実り多い飛躍のシーズンとなった。

◆東奥スポーツ功労賞

世界マスターズ陸上のM85クラス200メートルで世界記録の33秒76を出して優勝した田中博男さん=2017年3月、韓国
マスターズ陸上田中博男さん ― 88歳「世界最速」

 88歳とは思えない引き締まった体は、週4回、青森市の屋内施設で欠かさないトレーニングで培われた。

 「世界最速のおじいさん」の呼び名は決して大げさではない。年代別で競うマスターズ陸上で四つの世界記録を持つ。M85(男子85~89歳クラス)の室内60メートル(9秒77)、屋外100メートル(15秒08)、室内200メートル(33秒76)、屋外400メートルリレー(1分7秒03)。年々、タイムを縮めているというから驚きだ。

 「1回2時間のトレーニングでストレッチや階段昇降など常に体を動かすよう気をつけているだけ。特別なことはしていない」と謙遜する。

 陸上競技は、小学校教員を定年退職し「何か目的を持とう」と思い立って始めたのがきっかけ。陸上経験があったわけではなかったが、お金がかからず気楽にできることで長続きできたという。

 「健康維持のため、陸上をやってみようと思う人が増えてほしい」。同世代の星として、若い世代には刺激役として、世界記録に挑戦し続けるつもりだ。

選手強化のため平野早矢香さん(左)を迎えて行われた講習会=2018年8月25日
弘前卓球協会会長 山形一雄さん ― 「王国」青森支える

 1918年、「弘前卓球倶楽部」として発足した。当時は医師や商家の人たちが多かったという。27年に「弘前卓球協会」に改称。2018年、100周年を迎えた。

 1957、58年と全日本選手権男子シングルスを連覇した成田靜司さん、63年に同種目を制した小中健さんら全国大会、世界を舞台に活躍する多くの選手を輩出、卓球王国青森を支えてきた。2017年の全国高校総体では弘前市出身の梅村優香さん(大阪・四天王寺高、現在は中央大)が優勝、伝統が息づいている。

 協会が開いている伝統ある大会の一つが毎年4月29日に開かれている「弘前桜まつり硬式卓球大会」。年度初めの大会とあって、選手にとって腕試し的な意味合いを持つ。100周年を記念し、昨年からマスターズ向けの「成田靜司杯」大会を創設した。

 選手強化の講習会も協会の柱の一つ。昨年はロンドン五輪女子団体銀メダルの平野早矢香さんを招いて開いた。山形一雄会長は「110周年に向けて小中学生の強化に力を入れたい。25年の青森国体で、弘前の選手が青森県のユニホームを着て出場してほしい」と願っている。