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第73回東奥賞

 東奥日報社が文化、芸術、産業など各分野で傑出した個人・団体を顕彰する第73回東奥賞の受賞者が決まった。歌やダンスなどを通し、地域の魅力を全国にアピールし今年で20周年を迎えた地元アイドルグループ「りんご娘」(弘前市)と、農業高校の専門性を生かし水研究の国際コンテスト「ストックホルム青少年水大賞」でグランプリを受賞した県立名久井農業高校(南部町)の2団体に贈る。贈呈式は12月5日、青森市のホテル青森で行う。

▼音楽の力で地域活性/20周年アイドルグループ りんご娘(弘前)
▼水環境研究し世界一/青少年水大賞グランプリ 名久井農(南部)


その笑顔が幅広い年代から親しまれ、今や自称「県内認知度ほぼ100パーセント」のりんご娘。左から王林さん、ジョナゴールドさん、ときさん、彩香さん=9月27日、弘前市りんご公園

愛される地元の誇り/弘前観光コンベンション協会事務局長/白戸 大吾さん
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 この地域の恵みの一つは、常に挑戦を続け、それを次々と形にしていく樋川さんのような「人」の存在だと思います。彼の仕事は「人づくり」であり「街づくり」。そして、りんご娘のメンバーたちも、それをよく理解し、体現しています。もはや全国どこに出しても恥ずかしくないそのパフォーマンスは、まるで私たちを地元の甲子園出場校を見ているときのような誇らしい気持ちにしてくれます。子供から大人まで、これだけ幅広く愛されている人たちもいないでしょう。人がなすべき本当の「仕事」は、彼女たちがしているような、損得抜きで人を「応援したい」という気持ちにさせるものであるはずだと思います。

 山あり谷ありの20年。人知れぬ苦労もあったと思います。樋川さんや彼女たちの物語にはまだ先があります。これからもその活躍に注目し続けていきたいです。

音楽の力で地域活性/20周年アイドルグループ りんご娘(弘前)

 「一本のリンゴの木が一人前になるまで20年はかかる」。りんご娘が所属する弘前市の芸能プロダクション・リンゴミュージックの樋川新一社長は、ことあるごとに口にしてきた。現在、全国にあまたある地元アイドルグループのさきがけとして、りんご娘が活動を始めたのはまさに20年前の2000年。地元の若者たちの夢を応援しながら、地域の魅力を内外に発信するための手だてとして選んだ音楽の力が大きな実りをもたらした。

 これまでの間、現メンバーの王林さん(22)、ときさん(同)、ジョナゴールドさん(19)、彩香さん(同)を含め、リンゴの品種名を芸名にした歴代25人のメンバーがグループを継承してきた。彼女たちにとってリンゴミュージックはさながら「もうひとつの学校」。地域の子供たちを人として一人前に育てたい、という樋川さんの信条は、地元への強いこだわりとともに、これまでぶれることがなかった。子供からお年寄りまで幅広く支持される彼女たちの親しみやすさは、徹底した人格形成に裏打ちされている。

 これまで22枚のシングル、4枚のアルバムを発表。全国放送も含めテレビやラジオの番組、CM、地域のイベントやライブ活動など幅広く活躍。自称「県内の認知度ほぼ100パーセント」というほど、県民がその笑顔を見ない日はないぐらいだが、長い年月の間には撤退を検討するほどの停滞期もあった。

 最大の転機は16年。現在の4人で臨んだ、ご当地アイドル日本一を決めるコンテストで参加242組の中から見事優勝。4人はその実力で新たなステージへの扉をこじ開けた。この時に審査員を務めていたことが縁で、ミュージシャンの多田慎也さんが音楽プロデュースに参画するようになり、のちに多田さんは弘前へ移住。「RingoStar」「101回目の桜」など、数々の楽曲を生み出し、グループの活動は飛躍的にレベルアップした。リーダーの王林さんは「地元への感謝と恩返しの気持ちで出場したコンテストでの優勝をきっかけに、地元をよりPRできるようになったことが何よりうれしかった」と振り返る。

 11年から弘前市のリンゴキャンペンガールとして全国を飛び回るなど、その知名度を生かした社会貢献活動にも熱心で、18年には「県りんご勲章」を受章。コロナ禍でライブ活動がままならない日々を逆手にとって、今年からリンゴ作りにも挑戦するなど、活動はさらに幅を広げている。



【写真上】ウェブ上でグランプリ受賞が発表され喜ぶ(右から)松橋さん、宮木さん、田村さん、中堤さん=8月25日、南部町の名久井農業高校
【同下】祝賀報告会であいさつする指導教員の木村さんと、(後列右から)松橋さん、宮木さん、田村さん、中堤さん=10月2日、八戸市のきざん八戸

さらなる飛躍を期待/名久井農業高校後援会会長 奥谷 史人さん
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 ここ最近の名久井農業高校の生徒たちによるさまざまな研究内容は、全国的にも高く評価されてきました。地元の南部町民にとって大きな励みになっています。

 特に国際コンテスト「ストックホルム青少年水大賞」に日本代表として出場し、グランプリを受賞したことは、長年にわたって教職員とこれまでの卒業生たちが協力して築き上げてきた輝かしい歴史と伝統と熱意を引き継いだ、在校生たちの努力のたまものです。大きく評価されるべきものです。

 これから第1次産業などさまざまな分野に携わる在校生たちのさらなる飛躍を期待し、また、名久井農業高校の良き伝統が将来にわたって引き継がれるよう、後援会としても協力していきたいと思います。

 東奥賞の受賞、後援会と町民を代表して心からお祝い申し上げます。

水環境研究し世界一/青少年水大賞グランプリ 名久井農(南部)

 ノーベル賞発祥の国、スウェーデンのストックホルム国際水協会が主催する「ストックホルム青少年水大賞」は、世界の20歳以下を対象とした、水環境に関する調査研究の国際コンテスト。「水のノーベル賞」と位置付けられる「ストックホルム水大賞」のジュニア版だ。名久井農業高校は8月、今年の青少年水大賞2020でグランプリを受賞した。

 同校は12年に初出場、18年には準グランプリに選ばれた。3回目の挑戦で、先輩たちが果たせなかった「世界一」に輝いた。多くの国内コンテストで最高賞を受けている同校にとっても、歴史的な金字塔となった。

 快挙を成し遂げたのは、いずれも環境システム科3年でリーダーの松橋大希(ひろき)さん、宮木琢愛(たくま)さん、田村侑晟(ゆうせい)さん、中堤康仁さんの4人でつくる研究チーム「トレジャーハンターズ」。国内コンテストで19件の中から代表に選ばれ、29カ国による本大会に出場した。

 研究テーマは、雨期と乾期があるアフリカなどでの農業用水の確保。現地では地面に穴を掘り、その周囲に土を盛って降水を受け止めており、土壌流出や水質汚染が課題となっている。チームは、土間や土俵に使われる日本伝統の土壌固化技術「三和土(たたき)」に着目。三和土を応用することで盛り土の耐久性を高め、より多くの集水が可能になり土壌流出も抑えられ、さらに盛り土に堆肥を加えることで食糧増産につなげられるとした。

 新型コロナウイルスの影響で、コンテストはオンラインで実施された。同校は学生寮内にスタジオを設置し、国内大会と同様に松橋さんと宮木さんが発表や質疑応答を担当。田村さんと中堤さんはサポート役として、発表で使うボードの作製やパソコン操作などを担当した。100通り以上の想定問答を用意し、本番に備えた。

 グランプリ受賞が発表されると、4人は喜びを爆発させた。松橋さんと宮木さんは「これからも研究を進め、世界の水問題の解決に貢献したい」と声をそろえた。

 同校教諭として長年指導し、現在は非常勤講師の木村亨さん(63)は「生徒たちがとにかく諦めず何回も実験に取り組んだ。本当に良かった」と喜ぶ。

 浅利成就校長は「生徒たちの努力に尽きる。さらに保護者、先生、地域の方々のサポートもうまく絡まっての受賞だと思う」と話している。