青森県文芸大会

◎第73回県短歌大会

県短歌大会 佐々木さん(南部)知事賞

 東奥日報社と東奥日報文化財団主催の第73回県短歌大会が20日、特別選者に歌人集団「かばん」会員で作家の東直子氏を迎え、青森市のリンクステーションホール青森で開かれた。参加者129人が特別選、宿題、席題の合計得点を競った結果、南部町の佐々木冴美(さゆみ)さん(77)が総合1位の県知事賞に輝いた。また、東氏が「新しい時代の短歌」と題して記念講演した。


佐々木冴美さん

 佐々木さんは<透明な風が頭蓋をふきぬける弟の自死をききし瞬間>(席題「瞬」・人位)などを詠み、4回目の参加で初の県知事賞を獲得。「思いがけない受賞で運が良かった。席題の句は私の生涯で忘れられず重い内容だが、何十年もたったから人に話せるようになった」と話した。
 特別選の天位には、鯵ケ沢町の南美智子さん(80)の<「熊に注意」の看板の辺に熊出でて看板揺する月の林道>が選ばれた。


席題「瞬」の作歌に取り組む
参加者たち

 第73回県短歌大会の記念講演では、特別選者の東直子氏が「新しい時代の短歌」と題し、寺山修司や俵万智さんらの代表作を挙げながら、戦後から令和に至る若手の短歌の傾向について解説。「素材は自由に、作品の方向性や切り口もより多様化しており、今後、何が飛び出すか分からないが、それも楽しみではある」と話した。
 東氏は「昭和期」「バブル期」「バブル崩壊以降」「平成20年代」「平成の終わり~令和へ」に区分。内省的で思索的な文語体から、軽やかにリアルに日常を描く口語体を経て、明るい展望が見えづらい時代背景を反映して思索的傾向も再び見えてきたと説明。さらに「若い人が恋愛の歌を詠まなくなってきた。恋愛に関心がなくなったのか、それとも恋愛を短歌の題材にすることに辟易(へきえき)しているのか」とも語った。
 また、自身が選者を務める短歌の全国大会で、三沢市の堀口中が好成績を残していることなどを挙げ「太宰治や寺山も高校時代に短歌や俳句などの短詩文芸を始めた。若い力を育ててきた青森の地で、どんな新しい才能が伸びてきているのか楽しみ」と期待を寄せた。

◇総合 (1)佐々木冴美(南部)(2)髙橋昭一(むつ)(3)南美智子(鯵ケ沢)(4)澁谷善武(黒石)(5)小山田信子(十和田)(6)志村佳(青森)(7)赤坂千賀子(弘前)(8)小瀬川喜井(八戸)(9)神田富恵(弘前)(10)佐々木とも子(おいらせ)(11)佐藤京子(十和田)(12)竹洞早苗(青森)(13)中里茉莉子(十和田)(14)工藤邦男(弘前)(15)八木沢節子(青森)(16)中村範彦(中泊)(17)田中雅子(弘前)(18)澁田紀子(青森)(19)佐々木絵理子(八戸)(20)中村キネ(弘前)
◇特別選 ▽天位 南美智子▽地位 中野渡慶子(十和田)▽人位 小瀬川音(八戸)

▼高校生3人が初参加
 会場には高校生3人の姿も。県短歌大会事務局によると、73回を数える同大会に高校生が参加したのは初めて。青森明の星高文芸部1年の小泉佳峰(かほ)さんと長岡笑子(しょうこ)さんは、周りの参加者から激励を受け「人生経験が豊富なベテランの人たちの中で貴重な体験ができてとても光栄」と感無量の様子。「短歌はとても奥深く人柄が作品に出る。もっと視野を広げて、より面白い短歌を作れるよう頑張りたい」と目を輝かす。


他の参加者らと談笑する青森
明の星高校1年の長岡さん(中央)
と小泉さん(右)

 <再啓の紙飛行機を風に置き円周率に想いを溶かす>を詠んだ八戸高1年の小瀬川音(おん)さんは、特別選人位に選ばれた。短歌結社同人で、今回も参加した母喜井(きい)さんに誘われ、初めて大会に作品を投稿。今年の短歌甲子園で優勝した同校文芸部の同級生からも助言を受けているといい「31文字に思いを表すのは難しいけれど、1首作った時の達成感が楽しい」。

 

◎第73回県川柳大会

むさしさん(蓬田)知事賞 特別選天位 鈴木さん(青森) 県川柳大会

 東奥日報社、東奥日報文化財団主催の第73回県川柳大会が29日、青森市のリンクステーションホール青森で開かれた。県内外から88人が参加し、特別選、宿題、席題の合計点を競い、蓬田村のむさし(本名・八戸通正)さん(70)が総合1位の県知事賞に輝いた。

むさしさん

 

 

 

 

 むさしさんの県知事賞は初めて。「ひょうたん島が飛び出してくる茶封筒」(宿題「袋」)などの句を詠み、合計17点を獲得した。表彰式後、むさしさんは「こんな大きな大会で1番になれるとは思っていなかった。後から間違いでしたと言われないかが心配」と笑顔で話した。

 大会では特別選者の梅崎流青氏(全日本川柳協会常任幹事、川柳「葦群」編集・発行人)が「暮らしに根ざした川柳」と題して記念講演した。特別選「地」(梅崎氏選)の天位には、青森市の鈴木みさをさんの「安住の地なり津軽に杭を打つ」が選ばれた。

 第73回県川柳大会で、特別選者の梅崎流青氏は「暮らしに根ざした川柳」と題して記念講演した。俳人の故金子兜太さんや著名な陶芸家らとのエピソードを紹介しながら「ささやかな生活の中に、たとえ小さな事であっても発見がある。その一つの発見を作品化することが非常に大切」と唱えた。

 西日本新聞(本社・福岡市)の「ニュース川柳」の選者も務める梅崎氏は、川柳家は政治や社会情勢にもっと関心を寄せるべきだと言及。「俳句や短歌にはない財産として、時代に対する批判や思いを持ち、川柳人の礎を社会に置くことを忘れないで」と呼び掛けた。
 また、明治期を代表する言論人だった弘前市出身の陸羯南(くがかつなん)について、正岡子規ら多くの文化人を育て、川柳や俳句、短歌の発展に大きな足跡を残したと指摘。「短詩文芸を語る上で忘れることができない人物」と語った。

席題の作句に取り組む参加者たち

 

 

 

 

 

 記念講演に先立ち、席題「ぐるぐる」(岩崎眞里子、髙瀨霜石2氏共同選)、「旬(しゅん)」(佐藤ぶんじ、工藤青夏2氏共同選)の2題が発表され、参加者が句作に取り組んだ。披講では、宿題「袋」(笹田かなえ、内山孤遊2氏共同選)、「号」(沢田百合子、野沢省悟2氏共同選)、「スリル」(瀧尻善英、田沢恒坊2氏共同選)、「おしゃれ」(千島鉄男、田鎖晴天2氏共同選)と、席題、特別選の入選句が発表された。

 2位以下の入賞者と特別選の地・人位は次の通り。

 ◇総合 (2)千島鉄男(弘前)(3)斉藤劦(同)(4)髙瀨霜石(同)(5)岩崎雪洲(黒石)(6)月波与生(宮城)(7)濱山哲也(つがる)(8)髙橋星湖(むつ)(9)真島久美子(佐賀)(10)三浦敬光(青森)(11)田鎖晴天(八戸)(12)佐藤雅秀(藤崎)(13)瀧尻善英(八戸)(14)太田久(青森)(15)吉田吹喜(弘前)(16)沢田百合子(五所川原)(17)野沢省悟(青森)(18)成田我楽(五所川原)(19)赤坂高司(青森)(20)柳田健二(黒石)

 ◇特別選▽地位 滋野さち(青森)▽人位 船水葉(弘前)

◎第73回県俳句大会

県俳句大会 泉さん(弘前)知事賞 特別選天位は千葉さん(弘前)

 東奥日報社と東奥日報文化財団主催の第73回県俳句大会が8月25日、特別選者に俳句同人誌「群青」共同代表の櫂(かい)未知子氏を迎え、青森市のリンクステーションホール青森で行われた。県内各地から179人が参加し、特別選、席題、宿題の合計得点を競った。総合1位の県知事賞には、弘前市の泉風信子(ふうしんし)さん(84)が輝いた。

泉風信子さん

 

 

 

 

 泉さんは「水打つて鯨幕より父発たす」(宿題「打水」)などの句で合計14点を獲得。表彰式後の取材に「20代の頃から参加してきて初めての総合1位。伝統あるあこがれの大会でやっと夢がかなった。いい励みをいただいた」と笑顔で語った。
 特別選「夏季雑詠」の天位には、千葉新一さん(弘前市)の「よく見れば慈悲の貌してがまがへる」が選ばれた。また、櫂氏が「おいしい俳句」と題して記念講演を行った。
 大会では、開会と同時に二つの席題「通草(あけび)」「蝗(いなご)」が発表され、参加者が句作に取り組んだ。記念講演は特別選者の櫂(かい)未知子氏が、「食」にかかわる古今の作品を紹介しながら俳句が持つ多様な表現の魅力を熱く語った。
 食べ物を扱った句集を出版するなど、食を作句の一環に据えてきた櫂氏。「わが妻に永き青春桜餅」(沢木欣一)、「カステラに沈むナイフや復活祭」(片山由美子)などを例に、食を詠んだ俳句で、何気ない日常や家族との思い出を表すことができることを説明した。
 さらに「俳句は食べ物が作品の中心になり得る珍しい詩型で、このような文芸は世界中探してもない」と指摘。「食べることは生きること。その行為を詩にできることが俳句のぜいたくさ。“おいしそうな俳句”を作って豊かな俳人ライフを送って」と呼び掛けた。
 また、松山市でこのほど行われた俳句甲子園で初優勝した弘前高にも言及。「他校の指導で現地を訪れていたが、弘前高は作品、議論とも上品で、まさに優勝に値した。高校生だけでなく今大会の作品も含めて青森の俳句レベルの高さを実感した」と話した。

真剣な表情で席題に取り組む参加者

 

 

 

 

 

 青森市の宮川暢子(のぶこ)さんは「身近な例を用いた食の話はとても分かりやすかった。食にちなんだ俳句を作ることはあまりなかったけれど、今後の作句の参考にしたい」と話した。
 大会ではこのほか、席題が8氏による4人一組共同選で、各選者が披講。宿題「打水(うちみず)」は選者12人を代表して高橋千恵氏が披講した。

 大会結果は次の通り。
 ◇総合 (1)泉風信子(弘前)(2)草野力丸(深浦)(3)浜田しげる(青森)(4)小野寿子(同)(5)田端千鼓(八戸)(6)日野口晃(十和田)(7)小笠原聖子(八戸)(8)中村しおん(十和田)(9)清野さくら(青森)(10)木村あさ子(弘前)(11)西川無行(八戸)(12)蒲田吟竜(深浦)(13)葛西幸子(五所川原)(14)三野宮照枝(八戸)(15)小野寺和子(同)(16)松宮梗子(五所川原)(17)柏原昭三(青森)(18)太田直樹(同)(19)金田一一子(大間)(20)坂本幽弦(弘前)
 ◇特別選 ▽天位 千葉新一(弘前)▽地位 木村あさ子(同)▽人位 佐々木寿子(十和田)

 

◎第73回県文芸大会日程・特別選者決定​

 東奥日報社と東奥日報文化財団が主催する第73回県文芸大会の日程と特別選者が、以下の通り決まりました。詳しい内容は後日、部門ごとに追って発表します。会場は、俳句、川柳、短歌のいずれも、青森市のリンクステーションホール青森(青森市文化会館)5階大会議室です。

 

●県俳句大会
◇8月25日(日)

●県川柳大会
◇9月29日(日)

●県短歌大会
◇10月20日(日)

◇特別選者



櫂未知子
(かい・みちこ)氏
 

 櫂未知子氏
(かい・みちこ)

◇特別選者

梅崎流青氏
(うめざき・りゅうせい)

◇特別選者

 

東直子氏
(ひがし・なおこ)

俳句同人誌「群青」共同代表。1960年、北海道余市町生まれ、東京都在住。俳人協会理事、日本文藝家協会会員。句集に「貴族」(中新田俳句大賞受賞)、「蒙古斑」、「カムイ」(俳人協会賞、小野市詩歌文学賞受賞)がある。著書に「季語の底力」(俳人協会評論新人賞受賞)、「季語、いただきます」「俳句力」「食の一句」など。NHK・Eテレ「NHK俳句 俳句さく咲く!」(2017、18年度)などの選者を務めた。

全日本川柳協会常任幹事。川柳「葦群」編集・発行人。1946年、福岡県柳川市生まれ、同市在住。日本文藝家協会会員。78年から岸本吟一に師事。92年から2007年4月の終刊まで川柳「人間座」の編集長を務めた。14年、ジュニア川柳指導と広報「やながわ」を通じての川柳活動により柳川市民功労賞。1995年に第1句集「蟹の足」。2016年刊行の第2句集「飯茶碗」で第10回川柳文学賞。

歌人集団「かばん」会員、作家。1963年、広島県生まれ、東京都在住。現代歌人協会理事。96年、第7回歌壇賞。2006年、小説「いとの森の家」で第31回坪田譲治文学賞。著書に歌集「十階」、小説「とりつくしま」、エッセー集「七つ空、二つ水」、短歌入門書「短歌の不思議」、穂村弘氏との共著「しびれる短歌」、共編著に「短歌タイムカプセル」など。絵本テキストやイラストレーション、戯曲も手掛ける。