9月は「がん征圧月間」。がん検診の受診率向上へ「がん予防で、目指せ、健康長寿県」をテーマに、県総合健診センターの中路重之理事長と、三村申吾知事が対談した。(コーディネーターは東奥日報社論説編集委員長・清藤敬)

 

中路 重之(なかじ・しげゆき)
 1951年長崎県生まれ。弘前大学医学部卒。同大大学院医学研究科社会医学講座教授などを経て、同大大学院医学研究科特任教授。2018年6月から現職

<県内の状況>

 ―がんの死亡状況について、全国や県内の現状は。

 中路 日本人の死因の1位はがんで約3割を占めます。部位別の死亡率では、男性は肺がんが最も高く、1993年以降第1位です。女性では大腸がんと肺がんが高く、大腸がんは2003年以降第1位となっています。

 三村 6月に公表された「県人口動態統計(概数)」によると、18年に本県で亡くなった1万7936人のうち、約3割(27.6%)が、がんで亡くなっています。国立がん研究センターが毎年公表している「75歳未満の年齢調整死亡率」では、本県は、残念ながら04年から14年連続で全国ワースト1位です。部位別にみると、大腸がん、乳がんの死亡率が特に高くなっています。

三村 申吾(みむら・しんご)
 1956年百石町(現おいらせ町)生まれ。八戸高校出、東京大学文学部卒。1992年から百石町長1期。衆院議員を経て2003年から知事。現在5期目

 ―がんと関わりの深い生活習慣について。

 中路 本県は働き盛りの死亡率が高く、その要因として生活習慣病になる前の若い頃の生活習慣が挙げられます。また、肺がんなど、さまざまながんのリスクとなる喫煙率が全国に比べて高いです。そのほかにも、多量飲酒や、野菜や塩分の摂取量、運動量などの数値が軒並み悪く、より一層の改善が望まれます。

 ―それでは県の対応は。

 三村 昨年策定した「第三期県がん対策推進計画」に基づき、禁煙など生活習慣の改善、がん検診の充実など総合的に対策を実施しています。17年度から県総合健診センターと連携し、青森市と弘前市で50代の大腸がん検診未受診者に対し、便に血液が混じっているかどうかを調べる「便潜血検査」のキットを送付し回収。希望者には内視鏡検査をする「大腸がん検診モデル事業」を行っています。

 中路 本県のがん検診受診率も、検診で精密検査が必要と判定された受診者が精密検査を受けた精密検査受診率も十分とは言えません。健康にあまり関心のない県民がまだ大勢いて、いかに興味を持ってもらうかが重要です。この課題の対策に「啓発型健診」が効果的だと思っています。

 ―啓発型健診とは。

 中路 一般的な健診における「病気の判定」に加えて、「健康のレベル」を知り健康に関する教育・啓発をセットで行うことで、受診者が自ら行動を改善し、病気を予防することを目的としたものです。この啓発型健診は単なる病気の判定ではなく「楽しい」健診です。この啓発型健診を今の特定健診・がん検診に加えることで、効果を上げ、さらに受診者を増やすことができると考えています。

 

<「健康経営®」>

―働き盛り世代の健康づくりについては。

 三村 本県では40、50代の働き盛り世代の生活習慣病による死亡率が全国と比べ顕著に高いことが課題です。職域を巻き込んだ健康づくりが重要だと考え、17年度から従業員の健康づくりに積極的に取り組む企業を支援する「県健康経営認定制度」を実施しています。

 ―県健康経営認定制度とは。

 三村 従業員の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実施する「健康経営」に取り組む事業所を認定するものです。認定には「従業員へのがん検診の受診勧奨と勤務時間内に受診できる体制の構築」や「施設内禁煙」などの要件を満たす必要があります。認定されると、県入札参加資格申請時の加点や企業就職説明会への優先的参加などの優遇策があります。今年8月16日現在、180事業所を認定しており、各事業所の取り組み状況は県のホームページで紹介しています。

 中路 社長が先頭に立ち健康経営を通じて従業員に健康リテラシーを啓発していくことが大切です。これまで健康リーダーとなるための育成研修を行ってきた県医師会「健やか力推進センター」では、17年度より県健康経営認定制度導入に向けた研修も行っています。

※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

 

<今後の展開>

 

 ―今後どのように、がん対策を進めていくか。

 三村 死亡率の減少効果について科学的根拠のあるがん検診をさらに推進します。県基本計画「『選ばれる青森』への挑戦」では、がんの予防と早期発見・治療を進めるとともに、患者と家族の苦痛軽減などに取り組むこととしています。検診を受けやすい環境整備も重要です。

 中路 本県では、がんなどの病気が見つかったときには、すでに進行している人が多いというデータが示されています。その対策として定期的ながん検診と、疑いがあった場合は精密検査を受診することが重要です。17年の当センターの統計では、国が勧める胃、大腸、肺、乳、子宮頸がんの五つのがん検診で「要精密検査」とされたうち、実際がんが見つかったのは、およそ40人に1人の割合で、その約65%は早期です。勇気を出して早く精密検査を受けてほしいです。

 ―健康長寿への取り組みは。

 三村 本県は糖尿病による死亡率も高いです。糖尿病に関する正しい知識を普及啓発するため、職員提案で結成された「高血糖ストッパーズ」の一員として私自身、糖尿病予防キャンペーンを行っています。今後到来する超高齢化時代を見据え、地域で安心して老後を迎えることができるよう住民同士で支え合う「青森県型地域共生社会」実現のため、がん対策をはじめとした各種施策を行っていきます。

 中路 がん予防には、子どもたちへの健康教育や職場内の健康についての意識改革も必要です。特に働き盛り世代では、生活習慣と健康の関わりやデータの読み解き方など、健康に対する正しい知識を身につけることが求められており、当センターでも専門のスタッフによる健康教育をさまざまな職場や団体に出向いて実施しています。

 ―健康のために日々、気をつけていることは。

 三村 野菜を多めにとることと、歩くことを心掛けています。

 中路 お酒とたばこはやらないようにしています。居酒屋で焼き魚にしょうゆをかけて食べていたら、お客さんに「普段言ってることと違うじゃないか」と塩分を控えるよう指摘されました。健康意識の高まりを感じ、少しうれしくなりました。

 

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