済州×青森 地域の逸品

「地域の逸品」第2回のテーマは海産物の加工品。豊かな海に囲まれた両地域は古くから漁業が盛んで、豊富な水産資源を生かした加工品造りが行われてきた。済州を代表する海の幸には、かつて朝鮮王朝への献上品としても用いられた乾アワビ、本県には中華料理の高級食材として江戸期から重要な輸出品となってきた陸奥湾産ホタテガイの干し貝柱がある。

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【2】海産物加工品

【2】海産物加工品

2018.7.25

健康食材として若い世代にも人気の済州産パササク乾アワビ

▼独自の食感“パササク”
 済州産アワビは、古くから王の食膳に供える食べ物として貴ばれた。蒸しては干す工程を繰り返し、乾アワビにして献上したと伝えられている。今では、夏場の「保養食(スタミナ料理)」の一つとして、蒸し料理や粥(かゆ)、焼きものなど、さまざまなメニューの食材に利用される。
 済州産乾アワビを手掛ける業者の一つに大洋営魚組合法人がある。同法人のキム・ヨンス代表(61)は、「天恵鰒(チョンヘボク)」ブランドで、済州産原料を使った「パササク乾アワビ」「高麗人参アワビ醤」「アワビ丸」-など多彩な商品を提供している。
 ブランド開発の経緯を、キム代表は「虚弱体質の夫に毎日、済州産アワビを1~2個食べさせたところ、健康を取り戻すことができたから」と説明。「そのままのアワビだと生臭みもあり続けて食べにくい。そこで、簡単に食べられるように干して臭みを消し、商品化したのです」と話す。
 キム代表の法人では、アワビに含まれる味と栄養をそのまま生かすため、アワビの内臓を含めて丸ごと乾燥させる製法を採用している。内臓を傷つけないようアワビの殻を外すには、手間とノウハウが必要だが、そこにこだわりがあるのだという。殻を外し前処理したアワビは、1週間から10日間、蒸しては干す工程を繰り返してパササク乾アワビに生まれ変わる。
 「パササク」というのはサクサク、パリッとした食感を表す韓国の表現。乾アワビには、石のように硬いものも多いが、同法人ならではのノウハウで独自の食感に仕上げた。
パササク乾アワビの顧客は30~40代が中心。同法人は、主な流通ルートが天恵鰒のホームページを通じたネット販売であることや、健康に関心を持つ若い世代が増えてきたことが背景にあるとみている。
 同法人のキム・ジュンサン総括部長(49)は「30~40代のお客さまが、本人と親の健康のために購入するケースが多い」と指摘。「最近はダイエットをする若い女性も購入している。運動するときにも手軽に食べられ、腹持ちがいいことが評価されているようです」とニーズの広がりについて語った。 (チェ・へウォン)

水揚げされた済州産アワビ
【写真左】パササク乾アワビを販売する大洋営魚組合法人のキム・ヨンス代表【写真右】アワビ加工品の原料を収穫する済州の海女さん

▼一個丸ごと 栄養豊富
 天恵鰒のパササク乾アワビは、何よりもアワビを丸ごと味わえるのが最大の特長。アワビの身だけを材料にした他の製品とは異なり、内臓まで使い、独自開発したしょうゆで味付けして風味を一層高めた。お菓子のように手軽に、いつでも好きなときに食べられる。
 歯の弱いお年寄りやお子さんには、乾アワビを細かく砕いてご飯にふりかけて食べたり、ヨーグルトなどと一緒に食べたりするのがお勧め。高麗人参、干しナツメと一緒に味わう食べ方もある。
 香港で「食神」と言われる美食家の蔡瀾(チャイラン)さんは、2015年の「韓国産プレミアム水産物プロモーション」でパササク乾アワビを試食し「食べれば食べるほどパリッとした食感が印象的。栄養豊富なアワビの内臓を一緒に楽しめる素晴らしい製品」と評価した。
 パササク乾アワビは、16年に開かれた第18回済州島観光記念品公募展で、豊かな海に囲まれた地域の生活や文化、歴史に根差した特色ある観光記念品の一つとしても認められた。

中華料理の高級食材、珍味として根強い人気の「干し貝柱」

▼自然乾燥 うま味凝縮
 東を太平洋、西を日本海、北を津軽海峡に囲まれた青森県は、四季を通じて豊富な海の幸を味わうことができる。その中で最も生産額が多く、全国的にも知られているのが陸奥湾産ホタテガイ。保存性に優れた干し貝柱は、江戸時代から中華料理の高級食材として輸出されるようになり、青森みやげを代表する商品として今も根強い人気がある。
 「陸奥湾のホタテがおいしいのは、自然豊かな山々に囲まれた湾内が、いわば天然のスープのようなものだから。栄養たっぷりの海で養殖されるので貝柱がよく育ち、お刺し身は甘みたっぷり。干し貝柱には、濃厚なうま味が凝縮されています」。むつ市にある大型観光施設・下北名産センターの菊池俊明代表取締役は、自信たっぷりにこう話す。
 センターが扱う干し貝柱は、地元で水揚げされた新鮮なホタテを原料に使う。秘伝のスープで、じっくり煮込んだ後は乾燥作業。機械を使わず、天候や気温を見極めながら根気強く自然乾燥させるため、出来上がるまでには数週間かかる。
 干し貝柱を手で細かくちぎれば、そのままホタテの風味を楽しめるため、手軽な酒のつまみなどにぴったり。料理に使う場合は水に浸し、軟らかくして煮物やサラダなどに入れるが、うま味が溶け込んだ戻し水も調理に使うと、さらに味わいに深みが増すという。
 センターがあるのは、地元の新鮮な農水産物が集まる総合卸売市場の敷地内。年間約10万人の観光客が大型バスなどで訪れ、郷土料理やショッピングを楽しむ。中国や韓国、台湾などからの観光客も増えているため、外国語の看板や掲示も用意。千種類を超す土産品の中では、陸奥湾産ホタテを使った商品が一番人気で品数も圧倒的に多い。
 菊池さんは10年ほど前、韓国・済州島を旅行したことがあり「きれいな海、さわやかな空気、おいしい食べ物が印象的だった」という。「ホタテをはじめとした陸奥湾の海産物は自信を持ってお薦めできる商品。ぜひ、舌の肥えた済州島の皆さんにも味わっていただきたいですね」と話す。

【写真左】ホタテをはじめとした豊かな海の幸を育む陸奥湾(画面左は、むつ市街) 【写真右】優れた味と品質で国内外に知られる陸奥湾産ホタテガイ
【写真左】食を通じて青森と下北の魅力を国内外に発信する菊池さん 【写真右】大型バスで訪れた観光客らでにぎわう下北名産センター

▼代々守ってきた煮汁
 干し貝柱は、ホタテ加工品の中で定番的な商品。見た目も素朴なので、どの店で買っても味に違いはなさそうなものだが、製造する業者によって仕上がりは全然違う。その違いを生むのが「秘伝のスープ(煮汁)」だという。
 下北名産センター代表取締役の菊池俊明さんによれば、原料となる新鮮なホタテを煮込むスープは、それぞれの業者が代々受け継いできたもの。「材料を少しずつつぎ足しながら守ってきた煮汁に、味が同じものは一つもない。業者がよそに出すことは絶対ないはず」と、作り手の強いこだわりを語る。
 干し貝柱の一般的な調理例では、1個につき60ミリリットルくらいの水を容器に入れ、半日~1日くらい時間をかけてゆっくり戻す-とあり、だしがたっぷり出ている戻し汁を調理に使うのがお約束。「干し貝柱は、商品サイズの割に値段が高いと思われるかもしれませんが、掛かった手間を思えば当たり前。戻し汁は絶対に捨てないで、味わってくださいね」と菊池さん。