プロデビュー戦を勝利で飾った吉崎選手(右)(c)K-1)
「常に謙虚に、でも強気で」。日々練習を欠かさない吉崎選手=K-1ジム大宮

 2022年2月20日、東京・後楽園ホール。格闘技K-1 Krush(クラッシュ)女子アトム級(45キロ以下)で19歳(当時)の若手が実力者を破り、鮮烈なプロデビューを飾った。青森県初の女子K-1ファイター、吉崎生選手(20)=青森市出身=だ。

 既にプロ5戦を戦い注目を浴びる相手を、吉崎選手は強烈な右パンチと効果的なローキックで圧倒した。「初戦でも緊張せず、勝つ気持ちを前面に出せた」

 所属するK-1ジム大宮(姜宗憲代表)の門をたたいた高校3年の秋から、吉崎選手は持ち前の挑戦心で練習に打ち込んだ。K-1全日本アマ王者獲得などアマ5大会で優勝する好成績を挙げ、21年のアマMVPに。プロデビュー戦が新人としては異例の後楽園ホールだったのも、実力が高く評価されている証左だ。

 「アマMVPは素直にうれしかった。でも自分が目指すのは、アマではなくプロのトップ」と吉崎選手。姜代表は「気持ちが強く真面目。津軽で言う『じょっぱり』って、こういう性格のことですかね」と、6~7時間にも及ぶ過酷なトレーニングを毎日欠かさないまな弟子を優しく見つめる。

 幼い頃は格闘技より野球好きだった。小学1年生で野球を始め、小中では野球部に所属、中3で県選抜チーム「青森ゴールデンボンバーズシニア」の一員に選ばれた。高校でも公式戦に出たいと埼玉栄高校(さいたま市)に進学。女子野球部に入部するが、全国の精鋭60人超によるレギュラー争いは過酷だった。

 3年生で部活を引退、警察官を目指し勉強していた時に、寮で見た動画サイトでK-1に出合った。「武尊(たける)選手の試合を見て、人がこんなに輝ける場があると知った」。挑戦心に火が付き、動画を見た翌日に同ジムへ体験入門。自分の新たな可能性が見え、この道に進もうと決めた。「学校は渋い反応。でも両親は、幼い頃から男子と一緒に野球をしていた娘だからなのか、理解してくれた」

 高卒後は同ジムにトレーナーとして勤務する傍らアマ大会に挑戦。20年9月の初戦勝利から12戦で11個の白星を重ねてきた。「勝ちたい気持ちを前面に戦うことを意識している」。強力パンチで前に攻め込むスタイルはその姿勢の表れだ。

 「世界タイトルが目標」と言い切るが、そのためには物心両面の支援が不可欠だ。「故郷は大好き。リングの高揚感は青森ねぶた祭の『じゃわめぎ』に似てますよね」と笑う吉崎選手。二人三脚で世界へ歩む故郷の支援者との出会いを待ち望んでいる。

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 <よしざき・なる 2002年青森市生まれ。少年野球指導者の父の影響で小学入学時から野球に没頭。「青森ゴールデンボンバーズシニア」元選手。埼玉栄高校女子野球部を経てK-1ジム大宮に所属。20年アマ初戦、22年プロ初戦とも勝利。21年アマMVP>