広島と長崎で2度原爆(げんばく)の被害(ひがい)を受けた「二重被爆者(ひばくしゃ)」の山口彊(やまぐち・つとむ)さん(2010年死去)の思いを受け継(つ)ぎ、平和活動を続ける孫の原田小鈴(はらだ・こすず)さん(47)=長崎市=による講話(こうわ)が11月29日、青森県弘前市で行われました。弘前学院聖愛中学高校の約560人が講話を聴(き)き、平和の大切さを学びました。
造船所(ぞうせんじょ)で働いていた山口さんは1945年8月6日に出張(しゅっちょう)先の広島で被爆し、帰宅(きたく)後の9日に長崎でも被爆しました。2006年から被爆体験を語り、原爆の悲惨(ひさん)さと核廃絶(かくはいぜつ)を訴(うった)え続けました。山口さんが93歳(さい)で亡(な)くなった後、長女の山崎年子(やまざき・としこ)さん(73)と孫の原田さんが「家族証言(しょうげん)」として山口さんの体験を伝えています。原田さんの長男で中学3年生の晋之介(しんのすけ)さんも語り部(べ)活動に取り組み、4世代にわたって平和への訴えを続けています。
この日の講話で原田さんは、祖父(そふ)の山口さんの体験が描(えが)かれた紙芝居(しばい)を読みました。広島では川にたくさんの死体が漂(ただよ)い、まるで「人間のいかだ」のようだったこと。ひどいやけどを負いながら帰った長崎で再(ふたた)び被爆し、高熱と吐(は)き気に苦しみ「まるでキノコ雲に追いかけられているみたいだ」と感じたことなど、壮絶(そうぜつ)な体験を語りました。
原田さんは「平和は誰(だれ)かがつくるのではなく、みなさんの思いでつくるもの。核兵器廃絶の思いを持ち、たくさんの人につないでほしい」と呼(よ)び掛(か)けました。
講話の後には、山口さん一家や青森市在住(ざいじゅう)の二重被爆者・福井絹代(ふくい・きぬよ)さん(91)らが出演(しゅつえん)するドキュメンタリー映画(えいが)も上映されました。
高校3年の黒木あおいさんは「核によって普通(ふつう)の生活が一瞬(いっしゅん)で変わってしまうことを改めて感じました。自分の考えを深めて意見を発していくことが大切だと思いました」と感想を発表しました。