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前田せんべい店の前田さん(右)と妻洋子さん=地図(1)

 二日町にある前田せんべい店に入ると、前田俊範さん(68)と妻洋子さん(63)が朝から張り切って仕事をしていた。

 前田さんは、かつて消防署に勤務。定年退職後、母まささんが閉めた店を再開させ、8年が過ぎた。

 そのまささんは3年前、88歳で他界。「せんべい作りは簡単なものじゃない」という母の言葉が今、身に染みて分かる。「体が動く限り作り続ける。死んだら棺おけに、たくさんのせんべいを入れてほしい」と前田さん。自家栽培したエゴマを使った「じゅねせんべい」が一押しだ。
 

▼1752歩
中平せんべい店の中平さん(左)と妻ナヨさん=地図(2)

 川守田関根川原にある創業28年の中平(なかたい)せんべい店に着いた。中平重雄さん(77)が配達、妻ナヨさん(72)が焼き、長女貴美子さん(47)が袋詰めを手伝う。一家でせんべい作りに忙しい。

 ピーナツ入りや、自家栽培したシソが付いたものが人気。ナヨさんは、朝8時から1日千枚以上焼く。

 年を重ね、体調を崩すことが多くなった中平さんは「営業はあと1年ぐらいかな」と思わず弱音を漏らす。元気なナヨさんはすかさず「入れる袋がたくさん残っているから。やれるだけやらないと」と諭すように話した。

▼3517歩
安ケ平せんべい店の工藤さん(右)と娘の領子さん=地図(3)

 昼前に同心町同心町平の安ケ平(やすがひら)せんべい店へ。焼き場の熱気に包まれながら、工藤栄子さん(69)と長女領子(えりこ)さん(42)が懸命に手を動かしている。

 創業68年。栄子さんは3年前に亡くなった母さきさんから教えられ、半世紀近くせんべいを焼き続けてきた。「先代の技を継ぎ、昔と変わらぬ味を守ってきた」と自負を込めて語る。

 名物は直径5センチ、厚さ1ミリ弱で、3口ほどで食べられるミニせんべい。もちもちとやわらかな「みみ」も人気で、離乳食代わりに買っていく夫婦も多い。「せんべいは私の生きがいだよ」。工藤さんの一枚一枚に懸ける情熱は衰えない。

▼6584歩
松原せんべい店の松原さん(左)と妻文子さん=地図(4)

 国道104号を田子町方面に進む。豊川中屋敷平に松原せんべい店があった。「食べてみな」。垂れ目で人懐こい表情が印象的な松原勝乗(かつのり)さん(57)が優しく出迎えてくれた。

 70年余り続く店の3代目。ごまやくるみ入りが売れ筋で、夏場はアイスを挟んだ「せんべいアイス」も好評を呼ぶ。「せんべいは人生そのもの」。多くを語らないが、その一言一言に職人らしい思いが込もる。

 妻文子さん(54)と時にけんかしながら、仲良く明るく店を開く。大学2年の長男英利さん(19)が後を継ぐのが願いだ。「先々代から続くのれんを、これからも守ってほしい」と期待は大きい。

 

▼13883歩
尾下せんべい店の尾下さん(右)と娘の寛子さん=地図(5)

 西日がまぶしい。国道をさらに西へと進み、斗内田屋ノ下の大きな鳥居をくぐって100メートルほど歩くと、創業25年目を迎えた尾下(おした)せんべい店に着いた。

 「入れ歯が多い年寄り向けに、やわらかく作っているんだ」と尾下通恵(みちえ)さん(73)。八戸市に嫁いだ長女寛子さん(46)の手を借りて店を営む。干しエビや煮干し、かつお節を入れたせんべいが売りだ。

 3年前に大病を患い、作る量は少なくなった。「歯は抜けるし、腰は曲がるし大変だ」と苦笑する。それでも「せんべい命だ。まだまだやるよ」と力強く語り、寛子さんと顔を見合わせて笑った。