「幼いころからテレビや映画が好きで、映画館へも父とよく足を運んだ」と言う工藤さん=東京・赤坂のテレビマンユニオン制作技術室
中国ロケでパンダと一緒に(本人提供)

 日本の独立系番組制作会社の草分け・テレビマンユニオンのディレクター工藤加奈子さん。人気番組「世界ふしぎ発見!」(TBS系ATV)の制作を22年にわたり担当するほか、数々の番組制作の要を担う。

 仕事の範囲は広い。「調査、ロケ地選び、撮影、編集などなど。映画監督と同じです」。手掛けた番組は50本に上り、「ふしぎ-」ではアイスランドから希望峰がある南アフリカまで約30カ国を訪ねた。中国でパンダ関連施設の取材をした際は、飼育員のお手伝いで赤ちゃんパンダに触れたことも。「手袋を付けるなど感染対策に気を遣った」

 父は東奥日報写真部長を務めたカメラマンの故正市さん。その未公開写真を夫とともに発見、写真共有アプリで公開すると、昭和の暮らしを捉えた数々の写真が反響を呼んだ。9月出版の写真集は海外からも好評という。「父も多くの人に見てもらいたかったのではと思っている。大判で見たい、という声もあり、できれば次の出版も考えたい」

 まるで父の足跡をたどるように映像の仕事を選んだ工藤さん。「父を特に意識したわけではないが…影響もあったのかな。テレビ番組や映画の話をよくする家族ではありました」

 「ふしぎ-」のディレクターになったのは2001年。この頃ブーム前夜だった「ハリー・ポッター」に着目、NHKに提案・制作した番組が高評価を得たことを受け、「ふしぎ-」でも映画の公開に合わせてハリポタ特番を複数制作し、高視聴率を上げた。「ハリポタに目をつけたのは早かったと思う。英国は毎年のように取材した。印象深い仕事です」と振り返る。

 工藤さんの番組を晩年の正市さんは見逃さず、何度も繰り返して見ることもあったという。電話などで感想を伝えてくれることもあったが褒め言葉は少なく、「なんで褒めてくれないかなあ、と思ったものです」。

 正市さんは工藤さんに「(番組が)通り一辺倒の話では面白くないし、かといってただ面白いだけの話でもね…」と言うことがあったという。家族など身近なテーマを好んだという正市さん。「目新しい題材を探すのではなく、私なりの視点と切り口で掘り下げていく。しかしそのやり方でひとを傷つけないようにする。そう心がけています」

 コロナ禍は番組制作にも影を落としたが、国内の素晴らしい素材をあらためて見つめ直す機会にもなったという。「知らないものはまだまだある。素材の歴史的な価値、そして家庭の価値に目を向けてもらえるような番組の制作に取り組んでいきたい」

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 <くどう・かなこ 1965年青森市生まれ。早稲田大学卒業後、89年テレビマンユニオン入社。旅番組「遠くへ行きたい」などの制作を担当。2001年から「世界ふしぎ発見!」ディレクター。他にもNHK国際放送の番組など多数制作。夫と都内在住>