「搖(ゆ)れる大地」に出演した松林さん。「大人になっても持ち続けている幻想性をなくしたくない」
水族館劇場の魅力を語る松林さん=東京・銀座の本社東京支社

 「土着の藝能(げいのう)」として野外劇を各地で上演する劇団「水族館劇場」。松林彩さん(青森市出身)は役者であり音響、照明もこなす。「芝居小屋の設置から撤収まで、裏も全て見せて観客と楽しむ。それが面白い」

 5月の東京・羽村市での公演「Naked アントロポセンの空舟(うつほぶね)」で好演、10月には一座の路上芝居ユニット「さすらい姉妹」の新作に出演(9、10日午後7時から三軒茶屋太子堂八幡神社境内。投げ銭制)。「役者がせりふを吐けばそこに世界が立ち上がり、客はその世界を感じられる」と水族館劇場の魅力を語る。

 元々は映画人。青森西高校から川崎市の映画専門学校に進み、卒業後は数々の邦画の製作現場で撮影の仕事をした。「約10年頑張ったが、もの作りから一度離れようと思って」、2011年に撮影監督を務めた作品を区切りに映画界を離れた。下北沢でカフェを経営したり、故郷を一人旅するなどして過ごした。

 「実は専門学校時代、水族館劇場の芝居を見た。独特のにおいと居心地よさを感じた」。気に入って時々照明の手伝いに行ったり、エキストラもした。しかし多忙さもあり、いつしか一座から足が遠のいていた。

 13年、一座の創設者で代表の桃山邑さんから「三軒茶屋で芝居やる。手伝いに来い」と突然電話。一座のにおいを感じたように思って、心が沸きたった。「この世界に行きたい-と、もうノンストップ。手伝いに行った晩に座員と泊まり込んだ」。その後も手伝いを続け、役者になるよう勧められて正式入団した。「演じることの怖さはあった。でもここから離れることがいいとは思わなかった」

 一座の公演は年1回。高さ10メートル前後の芝居小屋の設営から半月ほどの公演、撤収までの約2カ月をそこで暮らす。「周りの住民たちが『何をやるのか』と設営中からのぞきに来て、終演後は『また来てね』と。そんなつながりができる」

 座員は皆、普段はそれぞれに仕事を持っている。都内に住む松林さんも、高層ビルの窓の清掃アルバイトをしている。「芝居小屋の設営作業に役立つと考えて始めた」。ゴンドラに乗る作業で地上40階、ロープだけの支持では24階の高さの窓を磨いているという。

 「本県で水族館劇場を見たいという人がいればうれしい。実現すれば本県が舞台の芝居になるかも」と目を輝かせる松林さん。「一座の芝居には人心を奪うような幻想性と、まるで子供のころ見たサーカス小屋のような怪しさがある。今の私がやれることができ、いるべき場所はここなんだと思っている」

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 <まつばやし・あや 1979年青森市出身。青森西高校卒。日本映画学校(川崎市、現日本映画大学)卒業後、映画製作現場へ。撮影見習いや助監督を経て2011年「クレイジズム」で撮影監督。15年、劇団「水族館劇場」入団。役者兼スタッフ>