「若者に勉強の機会を与えたい」。指導する高見さん(中)の目は厳しくも温かい=三鷹市のスタジオ・t23
自作制作にも精力的な高見さん。銀座で開いたグループ展にも3点を出品

 洋画家で、生徒たちに技術を教える講師でもある。十和田市出身の高見政良さん(73)が東京・三鷹市に構えるアトリエ「スタジオ・t23」では生徒たちが真剣にデッサンやクロッキーに打ち込む。多くがアニメやビデオゲーム制作に関連する若者だ。「動画には人体を正しく理解したデッサンが欠かせない。キャラクターの動きが全く変わる」。高見さんは語る。

 アニメも映画もゲームも制作にCG(コンピューターグラフィクス)が不可欠な時代。だがキャラの動きはパソコン任せにできず、アニメーターらの正確な監修がなければ動きは不自然に感じられると言う。

 子どものころから絵が好きで、高校では美術部に所属。美大進学を目指し東京で浪人生活を過ごすうちに仲間と美術グループを結成し、大学に行かず画家として生きる道を選んだ。10年続けて個展を開くようになり、日本美術会にも所属。新聞連載記事のイラストを描くなど画業に打ち込みつつ、専門学校で絵を教えるようになった。

 専門学校の生徒には、アニメーターやゲーム制作を志す若者が多かった。「生徒たちが就職し製作現場に入ると、画力の重要性を痛感することになる」。身に付けるべきは知識に裏打ちされた基礎画力。そう考えた高見さんは自ら日本美術解剖学会に所属するなど懸命に勉強し、その知識を教え子にも伝えるようになった。

 「骨格や筋肉の付き方を直接見る機会はほとんどないが、勉強すれば知識は身につく。それを正確に描ければキャラは自然に芝居できる」。高見さんの考えに生徒たちは共感した。「でも画力を磨く場がない」。生徒の声を受け、自身のアトリエでデッサン教室を開くようになった。2000年のことだ。

 「それまでアニメーター向けのデッサン教室はなかったと思う」。今ではクロッキー教室と合わせると約50人の生徒がこのアトリエで学ぶ。画業や講師の稼ぎはほぼ教室につぎ込み、今年で21年目。世界的に知られるゲームの制作者もここで学んだ。迷いが生じた現役のアニメーターが再び通うこともあるという。「どう生きるべきかという物語を自らつむぎ、楽しめるのは人間だけだと思う。それを表現するには、人間の基礎を描ける知識と画力は不可欠なんです」

 若者を鍛えつつ、高見さんは自身の画業にも取り組む。7月には銀座の画廊で開いたグループ展に絵画を出品した。「実は十和田湖にまつわる伝説を絵本にする考えがあって。今は少し計画が滞っているが、いつか形にしたい」。クリエーターの顔をのぞかせた。

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 <たかみ・まさよし 1948年十和田市出身。三本木高校卒業後に上京、友人と美術グループを結成、個展も開催。日本美術会に所属し事務局長も務めた。美術系専門学校で講師を務めつつ、独自にデッサンなどの教室を主宰し多数のアニメーターらを輩出。日本美術解剖学会員でもある>