ワインの試飲を楽しむ観光客ら=7月21日、米西部カリフォルニア州ナパ(共同)
 山火事による被害について話すワイン職人の男性=6月、米カリフォルニア州ナパ(共同)
 焼け跡から見つかり、博物館で展示されている「ワイン王」長沢鼎の刀=6月、米西部カリフォルニア州ソノマ(共同)

 澄み切った青空の下、なだらかな丘陵地帯に広がる深緑のブドウ畑―。昨年10月に大規模な山火事に襲われた「ワイン王国」として知られる米西部カリフォルニア州のナパ郡とソノマ郡。ワイナリーは生産を再開し、焼けた施設の再建も始まるなど復興が進む。観光客の足も戻り、にぎわいを取り戻していた。

 「スタッフは無事だったが、テイスティングルームやオフィスなどの建物が全焼した。長年書き残してきた書類も焼けてしまった」

 ナパバレーで約40年間、生産を続ける「シニョレッロ・エステート」。フランス南部コルシカ島生まれというワイン職人の男性が焼け跡を指さしながらため息をついた。

 火事が起きたのは昨年10月8日夜。男性は「炎は風にあおられ、まるで生き物のように跳びはねていた」と振り返る。火勢は激しく、建物はあっという間に火に包まれた。なすすべもなく警察から避難を命じられた。

 このワイナリーのブドウ畑は東京ドーム約3個分に相当する約17万平方メートル。ほとんど影響を受けず、赤ワイン用のカベルネ・ソービニヨンを発酵させていた貯蔵タンクも無事だった。今年6月には瓶詰め作業を行い、出荷を済ませた。7月には仮オフィスの建設も始まった。

 「人的被害はなく幸運だった」と話すのはオーナーのレイ・シニョレロ氏。カリフォルニア州では今年も、山火事が多く発生しており、今後はスプリンクラー設置など防火対策に力を入れる考えだ。

 ソノマ郡では、幕末の元薩摩藩の武士で「ワイン王」と親しまれた長沢鼎が造り上げたワイン畑で知られる「パラダイス・リッジワイナリー」も大損害を被った。

 醸造施設などが全焼してしまったが、焼け跡からは記念施設で陳列していた長沢の刀が見つかった。施設などはまだ再建途上にあるが、関係者は刀を「復興のシンボル」として、人々を勇気づけるため街中心部の博物館で展示を始めた。

 7月の週末、ナパバレーでは名物のワイントレインが大勢の乗客を乗せながら走っていた。人気の「ロバート・モンダビ・ワイナリー」には各国からの観光客の姿も。ロサンゼルスから家族と来た40代男性は「火事の影響が心配だったが、生産にほとんど問題がないと聞いてほっとした」と試飲を楽しんでいた。

(共同通信社)