新型コロナウイルスの感染拡大防止のため紙上大会として開かれた、東奥日報社と東奥日報文化財団主催の第75回県川柳大会。いわて紫波川柳社主幹の熊谷岳朗氏の特別選(「風」)や宿題(「朝」「魅力」「すらすら」「走る」「プレッシャー」「すっきり」)の入選作品を発表します。

●特別選・・・「風」 熊谷岳朗選
◇天位
 生も死も一場の夢秋風鈴  青森 葉閑女
【評】忘れられたように風鈴が秋にぶら下がる。つかの間の人生をふと、思うばかりである。

◇地位
 四十六億年のくしゃみコロナウィルス  青森 吉見恵子
【評】地球がくしゃみをしたかのごとくウィルスが蔓延。しばらくは共存の道なのか。

 ◇人位
 人情に触れると謳う北の風  青森  鈴木みさを
【評】北国の厳しさは、かえって人間の強さと温もりを引き出してくれているように思う。

◇秀逸
 消毒で始まる今日の風青し  深浦  草野力丸
 一瞬の風を深めてゆくいのち  弘前  黒瀧睦子
 風を聴く無人の家の花ざくろ  青森  滋野さち
 まだ風が残ってました冷蔵庫  青森  村田けん一
 どこの風だろう訛りがちょいとある  青森  まきこ

◇佳作
 それぞれの風待つ我儘な十指  青森  菊池 京
 桜には桜 君には君の風  弘前  稲見則彦
 涙したときにも風は風だった  弘前  にじの真美
 放課後の風は林檎の味だった  青森  野沢省悟
 手を振って手を振って追い風を贈る  藤崎  佐藤雅秀
 風船を手放すようにさようなら  青森  三浦清雪
 逆上りできて自由な風になる  むつ  髙橋星湖
 風の日の背中が貌になりたがる  蓬田  むさし
 もういいかいまあだだよって風を知る  黒石  北山まみどり
 風になれ自分の風になればいい  弘前  田中 薫
 風に乗れたのは明日を信じた綿毛だけ  弘前  きさらぎ彼句吾
 風が吹くわたしを解き放つために  弘前  高瀨霜石
 風を見た愛した君を生みました  五所川原  沢田百合子
 風待ちをしているうちに白髪に  青森  斉藤綺羅
 微風になるまで君を待つ蛍  黒石  大黒谷サチエ
 生涯の今日いちにちの風に会う  青森  本間 寧
 風まかせ実は緻密な風である  弘前  吉田吹喜
 硬いのかな掴んでみたい風の芯  五所川原  成田チセ
 吹っ切れた風が私を突き抜ける  黒石  三浦蒼鬼
 そよ風のように生きたいなと思う  外ケ浜  柳谷たかお

●宿題・・・「朝」 
◎沢田百合子選
◇天位
 朝という光の靴のおくりもの  青森  吉見恵子

◇地位
 母はきっと朝を探しに行ったんだ  三沢  守田啓子

◇人位
 コロナ禍の朝だボロンと鳴る鎖骨  青森  吉田州花

◇秀逸
 ひまわりに変身してる朝ごはん  青森  野沢省悟
 系図からはみ出していく朝の波  青森  工藤青夏
 朝顔よ闇夜を抜けて来たんだね  弘前  内山孤遊
 寝覚め良好今日は何して遊ぼうか  青森  村上あつこ
 朝が来るはずです僕の色を溶く  黒石  三浦蒼鬼

◎三浦敬光選
◇天位
 明朝体の「あ」になっていた父の貌  蓬田  むさし

◇地位
 戦争放棄 やっとヒト科の夜が白む  弘前  きさらぎ彼句吾

◇人位
 一日を組み立てているフライパン  青森  吉見恵子

◇秀逸
 朝顔のささやき夏の涼とする  弘前  辻口風来坊
 おにぎりを並べて朝の顔になる  弘前  黒瀧睦子
 目も耳も朝も母からいただいた  東北  井上健蔵
 揺るがない朝日に染まる無人駅  青森  千葉かほる
 人間がにんげんになる朝がくる  青森  太田 久

●宿題・・・「魅力」 
◎北山まみどり選
◇天位
 どこまでも馬の手綱を緩めない  つがる  鳴海賢治

◇地位
 木洩れ日が笑窪の上に浮いている  青森  三浦敬光

◇人位
 手つかずの森で私をとり戻す  黒石  柳田健二

◇秀逸
 サボテンは聞き上手なの加点する  青森  熊谷冬鼓
 スリーサイズみんな同じと来たもんだ  弘前  稲見則彦
 たったひとりに好かれる象の目になれた  弘前  千島 鉄男
 青春を結いあげている黒いゴム  弘前  蒲公英
 天鵞絨の声にひきずり回されて  五所川原  沢田百合子

◎野沢省悟選
◇天位
 そのままでいいよ全ては万華鏡  十和田  千葉ゆり子

◇地位
 縄文の漆の赤へ陽射し差す  外ケ浜  柳谷たかお

◇人位
 もう少し政治に欲しい魅力の徒  田舎館  畑中風臣子

◇秀逸
 煩悩をすべて抱いてる朧月  弘前  内山孤遊
 空気のような存在感が心地よい  弘前  船水 葉
 たったひとりに好かれる象の目になれた  弘前  千島鉄男
 何処か似て心惹かれる規格外  青森  赤坂涼河
 ルノワールの裸婦より妻のふくよかさ  弘前  福士慕情

●宿題・・・「すらすら」
◎瀧尻善英選
◇天位
 流暢な舌からこぼれ出る擬似餌  黒石  三浦蒼鬼

◇地位
 饒舌な人だなさみしがりやだな  弘前  高瀨霜石

◇人位
 すらすらと書いたらくがきこいのうた  八戸  松ちづ子

◇秀逸
 くずし字をさらりと書いている熟女  青森  田沢恒坊
 書き慣れた始末書 強くなる背骨  黒石  岩崎眞里子
 包囲網オセロ一気に裏返る  深浦  山野茶花子
 逆上がりくるり誉めてる青い空  十和田  木村奈生美
 言いわけは英語のろけは候文  青森  葉閑女

◎千島鉄男選
◇天位
 署名しそうセールストークのひまわりに  青森  熊谷冬鼓

◇地位
 詫び状のすらすら書きは許せない  む つ 髙橋星湖

◇人位
 ひらがなの優しさを脱ぐシャワー室  青森  千葉かほる

◇秀逸
 冒頭はすらすら言える土佐日記  青森  斉藤綺羅
 嘘八百すらすら言える君が好き  青森  和山 信
 鬱の字がすらすら書けて今日も無事  青森  三浦敬光
 母が来てまあるく座る草もみじ  青森  本間 寧
 本音より綺麗事だけ言いたがる  青森東高2  石久保芽生

●宿題・・・「走る」
◎田沢恒坊選
◇天位
 前髪もしっぽも切って走り出す  黒石  北山まみどり

◇地位
 影走るバベルの塔は無観客  東北  井上健蔵

◇人位
 まだ助走しているのかと言われても  つがる  髙橋せい子

◇秀逸
 東京のパンタグラフは眠らない  青森  神 千巖
 走り書きのヒントが不意に立ちあがる  弘前  にじの真美
 走ってはいけない過労死の出口  青森  吉田州花
 走ろうよホラ青空がついて来る  青森  千葉かほる
 位置に着くどこへ向って走るのか  青森  渡邊こあき

◎田鎖晴天選
◇天位
 走り着いた後期高齢また走る  青森  里村みつこ

◇地位
 あきらめない僕は周回遅れだが  青森東高2  石久保芽生

◇人位
 伴走者のきみこそ僕の金メダル  弘前  きさらぎ彼句吾

◇秀逸
 俺流に走って掴む青い鳥  青森  種市みどり
 走ろうよあっという間の今だから  五所川原  成田我楽
 トーマスもメロスも走る僕だって  弘前  稲見則彦
 いとおしむ走り続けた足だから  むつ  髙橋星湖
 ヨーイドン四方に走る多様性  青森  佐藤はじめ

●宿題・・・「プレッシャー」
◎山野茶花子選
◇天位
 折りにふれ家系図出して語る祖母  弘前  稲見則彦

◇地位
 デデデンと親父の山がそびえ立つ  弘前  内山孤遊

◇人位
 どん底のすわり心地にある便座  青森  本間 寧

◇秀逸
 プレッシャーかけて野太く生きている  深浦  草野力丸
 プレッシャー沈める老母の落し蓋  弘前  傳法けい
 代々の享年超える日の夕陽  青森  尾形せいじ
 大賞を取って次作が書けぬまま  青森  碧井渓翠
 ライオンのたてがみにあるプレッシャー  青森  種市みどり

◎高瀨霜石選
◇天位
 ライオンのたてがみにあるプレッシャー  青森  種市みどり

◇地位
 プレッシャーひとつ雪見大福ふたつ  三沢  守田啓子

◇人位
 そうめんの箱買い生きていられるかあ  黒石  高木まあこ

◇秀逸
 ひまわりを越せないボクのしゃぼん   弘前  千島鉄男
 わたくしの表面張力いっぱいです  黒石  岩崎雪洲
 丼でお代りしますプレッシャー  弘前  蒲公英
 さっきからパンツのゴムが締めつける  つがる  鳴海賢治
 向こうから同じTシャツやって来る  青森  佐藤はじめ

●宿題・・・「すっきり」
◎佐藤ぶんじ選
◇天位
 善人を辞めてすっきりした真顔  十和田  木村奈生美

◇地位
 難ありのおとこ一匹捌ききる  青森  杏ジャム

◇人位
 風呂敷の固い結び目ほどいた日  青森 渡邊こあき

◇秀逸
 歯を磨く次の冒険始めましょ  五所川原  沢田百合子
 ぐちゃぐちゃも全て飲み込むシュレッダー  青森東高2  石久保芽生
 自縄自縛わたしをゆるすことにする  青森  碧井渓翠
 しがらみを断ち切りました以下余白  深浦  草野力丸
 美辞麗句削いだら見えてきた本音  八戸  瀧尻善英

◎工藤青夏選
◇天位
 疑問符が取れて遠雷聞いている  黒石  柳田健二

◇地位
 憂鬱を直線裁ちにして秋へ  青森  渡邊こあき

◇人位
 人間が消えると止まる温暖化  青森  田沢恒坊

◇秀逸
 雨ざんざ上がれば虹という魔法  青森  吉田州花
 肩書を捨てて名刺の染みが抜け  青森  三浦清雪
 明日は明日今日は一日晴れだった  むつ  髙橋星湖
 ブラックホールへ棄てるわたしの泣き黒子  弘前  千島鉄男
 ミントティー大人の恋の終わり方  五所川原  沢田百合子