濁流と流木によって通行できなくなった国道279号=10日午前、風間浦村下風呂(読者提供)
洋品店内に入った泥水をかき出す住民=10日午後2時ごろ、むつ市大畑町新町

 「こんなに雨が降るなんて」「陸の孤島だ」。温帯低気圧の影響で激しい雨に見舞われた10日の青森県内。青森県むつ市と風間浦村、大間町、佐井村をつなぐ、むつ市大畑町の国道279号・小赤川橋が崩落した。通院や通学、通勤の道を分断され、風間浦村民からは「橋の修繕にどれぐらいの時間がかかるのか」とため息が漏れた。警戒レベルが最も高い「緊急安全確保」が発令された七戸町でも「生きた気がしない」と震える声が上がった。

通勤・通院の道分断

 小赤川橋は10日早朝に崩落。付近では、小赤川から流れてきたとみられる大量の泥と、皮が剥げた流木が一面を埋め尽くしていた。山側から崩れてきたとみられる小屋が住宅にぶつかるように倒れていた。夕方には、現場を入念に確認する自衛隊員や自治体職員の姿が見られた。

 橋が崩落した後の同日午前9時ごろ、風間浦村下風呂の木箱製造販売会社の代表取締役・坂本愛さん(47)は、消防団員の夫が重機を取りに行くために乗って行った軽トラックを移動させようと、徒歩や軽トラックで大赤川付近を移動、濁流の様子を撮影した。「経験したことのない川の勢いで、怖くて心臓がバクバクした」と振り返った。

 坂本さんは中学生の娘と旧下風呂小学校に避難。自宅と避難所を数回車で往復し、近所の1人暮らしの人や高齢者の避難を手助けした。村内は崖崩れが9カ所発生しており、役場がある易国間地区から役場の車両がたどり着けない状況にあったといい、「一人で居る人を見過ごせない。避難所も家も停電。食料など買い物できる場所もガソリンスタンドも行けない。まずは電気の復旧と、むつ市方面に行く橋の早期復旧を願う」と語った。

 同じく下風呂地区の20代男性は午前6時ごろ、自宅前の道路が川のようになっている様子を目の当たりにした。早朝から村が防災無線で避難を呼び掛ける放送を流していたが、道路は土砂に阻まれ、避難できる状態ではなかったという。

 風間浦中に避難した易国間地区の60代男性は「村は急傾斜地が多く、大雨になると被害が拡大してしまうのではないか」と話した。

むつ大畑 中心部 広範囲に冠水

 中心部が広範囲にわたって冠水したむつ市大畑町では、住民が建物の中に入った泥水を外にかき出すなど後片付けに追われていた。

 夏秋イチゴの生産者でイチゴ加工会社「A-berry(アベリー)」社長の阿部伸義さん(42)=同市大畑町=は、同日午前6時半ごろ、道路冠水などでいつもの道が通れない中、ようやく栽培ハウスにたどり着いたが、全7棟が水没しているのを確認。「力が抜けた」。夏秋イチゴの収穫は最盛期を迎えていた。

 水位が下がった夕方に再びハウスを確認しに行くと、身長170センチの阿部さんの肩を超える位置まで泥の跡があり、イチゴの株も泥をかぶっていた。阿部さんは「去年は新型コロナでイチゴの値が上がらず、今年はそれに輪を掛けるような災害。でも、へこんでばかりいられない」と気丈に話した。

 むつ市二枚橋地区に住む女性(74)は同日午前7時ごろ、友人から「大畑診療所近くが冠水している」と電話を受けた。外に出ると、津軽海峡を望む浜一面を大量の流木が埋め尽くしているのを目撃した。「(崩落した小赤川橋は)風間浦村や大間町から市街地の病院、介護施設に行く時に必ず通る橋。道路がないとこれほど大変だとは」と嘆いた。

 大畑川に面する新町地区の今井洋品店では、洋服などの商品が泥水でぬれた。店主の今井常博さん(79)は「午前6時ごろに起きたら店の前の道路に水があふれていた。水が引いた午前9時ごろから水をかき出しているが、腰が痛くなる」と話した。

 避難所の大畑小学校では住民が体育館に集まり、雨が弱まるのを心配そうに待っていた。無職井戸房江さん(90)は「昔から水害が多い場所と言われていたが、ここ10年以上こんなことはなかった」と述べた。

崩落の小赤川橋復旧めどは未定

 温帯低気圧の通過に伴う強風と大雨により、青森県内では下北地方を中心にライフラインにも影響が出た。関係機関が復旧作業を急いでいる。

 青森県県土整備部によると、むつ市大畑町赤川村の国道279号で小赤川橋が崩落した箇所については、国土交通省東北地方整備局(宮城県)が所有する仮設橋を架けられるか、11日に現地調査を行う。現時点で復旧のめどは未定。

 ほかにも国道279号では、むつ市内や風間浦村内の複数箇所で土砂崩れや冠水が発生している。土砂の撤去を進めているが、濁流が流れている箇所もあり、復旧作業は難航している。

 東北電力ネットワーク青森支社によると、9日午後9時すぎから10日にかけて各地で停電が発生した。むつ市、風間浦村、青森市、八戸市、黒石市、深浦町、横浜町、おいらせ町、東通村の延べ3791戸が停電し、10日午後5時現在、むつ市と風間浦村の971戸で停電が続いている。これらの地区では、橋の崩落や土砂崩れにより車両が故障箇所まで入ることができず、「現時点では復旧の見通しが立てられない状況」(同社)という。