流派の違うねぶた師3人が共作

 JR目黒駅近く、大日如来を本尊とする大圓寺を左手に見ながらきつい傾斜の行人坂を下りきると、日本初の総合結婚式場で知られる「ホテル雅叙園東京」が見えてきます。館内にある東京都指定有形文化財「百段階段」では「和のあかり×百段階段2018」を開催中。その目玉の一つが、青森ねぶたをモチーフにしたアート作品です。今年で4回目となるこのアート展には毎回、ねぶたが登場していますが、今年は流派の違う3人のねぶた師による合作が観られるとのこと。会場を訪れると…光と影の取り合わせの妙に息をのみ、思わず言葉を失います。ねぶた以外も、さまざまな技巧を凝らした作品それぞれがやわらかな光を放ち、一つ一つ、単独で展示会を開催しても良いほどのクオリティーの高さ。雅叙園さん、ぜいたくかつ絶妙なコーディネート力に脱帽です。

■すべてで写真撮影OK■

 和のあかり×百段階段2018は「祭り」「アート」「デザイン」「職人」「テクノロジー」がテーマ。日本の色彩、日本のかたちを表現した70組の団体・作家による1000点を超える作品が至る所に飾られています。このすべてで写真撮影OKというのですから、SNSに投稿しない手はありませんね。

 青森県民として気になるねぶたは「漁樵の間」にありました。純和風の部屋に入ると、微妙に違う

ねぶたがドーン。盛大に映り込んでいますw

タッチながら、調和の取れた3体のねぶたがドーンと視界に飛び込んできます。ねぶたの全身ではなく、面、手といったパーツでの配置が、かえって見えない胴体などへの想像をかき立ててくれます。壁、柱、天井には金箔、金泥、純金砂子で仕上げられた豪華絢爛な木彫が施されていますが、何といっても水面に見立てた漆黒の床面に映り込む、極彩色のねぶたの存在感が半端ない。竹取物語を題材にした、ねぶた師・立田龍宝さんによる「武者」、北村春一さんの「かぐや姫」、手塚茂樹さんの「帝」は、3人が意見を出し合い、同じ紙の上にラフを描いていったのだそうですから、その場面も貴重なアートの場面と言えるでしょう。そして、ふと、後を振り向けば、ガラス戸にも、ねぶたの映り込み。二重、三重の仕掛けで楽しませてくれます。

■目黒といえば…■

こけし就寝中

 なぜ竹取物語? 目黒といえば「サンマ」という貧弱な知識しか持ち合わせていない筆者ですがこの地は元々タケノコの産地だったそう。そういや、雅叙園エントランス前にも竹藪が配置されています。と、ここで一つ疑問が。このねぶた、どこから運び入れたのでしょう?まさか、その場で制作したとか…。答えは、ねぶたに向かって右手に雨戸があり、森を通って担いで室内に運び入れたとのこと。文化財の建物を汚さず、傷つけず、展示を実現させるには、相当なご苦労と気苦労があったと推察します。青森県関係ではこのほか、白糸の部分から光が透けるこぎん刺しのランプシェードがあったり、こぎんの模様で雪の夜を表現した屏風があったりと、とってもおしゃれな使い方です。
 

■「ホー」とか「へー」とか「え?」とか■

外国の作家さんの作品も

 青森目線ではねぶたが主になりますが、他にもきらびやかなミラーボールを無数に配置しつつ、中心部にあえて黒い部分を持ってきたり、枯れ葉をありのままに配置したり、銭湯絵師が描いた富士山の屏風を文化財の床の間に飾ったりとなかなかのチャレンジ。そうそう、百段階段の一つ一つに布団をかぶって寝ている石巻こけしがいたり、浮世絵調のイラストをよく見ると、現代の日常の喜怒哀楽を描いた山田全自動さんの作品だったり、光りで文化財に〝落書き〟ができたりと、「ホー」とか「へー」とか「え?」とか、思わず声に出してしまうような、数々の見所が詰まっています。

光と影の配置が絶妙

■9月2日までの開催■

 今回の「和のあかり×百段階段2018」は、すみだ水族館や東京タワー「天の川イルミネーション」、東海汽船の「東京湾納涼船」、ログロード代官山ともコラボしているとのことで、可能なら、すべてをコンプリートしたいところです。とはいえ、まずは雅叙園に足を運ぶべし。和のあかり×百段階段2018は9月2日までの開催。問い合わせは同イベント企画(電話03-5434-3140、午前10時~午後6時)へ。(C)