青森市の県共同ビル内に置かれている県事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継について「早めの取り組みが必要」と語る野澤統括責任者

 中小企業の事業承継をサポートする「青森県事業承継・引継ぎ支援センター」(青森市)の発足から間もなく3カ月となる。昨年度まであった二つの支援組織を統合し、人員を増強。4、5月の相談件数は前年の倍以上と、早速ワンストップ化の効果も出始めている。コロナ禍で多くの事業主が厳しい経営を強いられる状況下、野澤昇統括責任者は「後継者育成や経営を譲る相手探しには時間がかかる。早め早めの取り組みが必要」と指摘、積極的な相談を呼び掛ける。

 -センター発足から2カ月余りが過ぎた。

 「まだ始まったばかりだが、4、5月に受け付けた相談件数は昨年度同期間の2倍超となっている。そういう意味では統合の効果が出始めていると思う。民間信用調査会社の2020年の調査では、県内企業の60%以上で後継者がいない-という結果が出ている。後継者難による休廃業を防ぐためにも、早め早めに事業承継に取りかかることが必要だ」

 -なぜ、早期の準備が必要なのか。

 「親族内承継であれば、後継者の育成には時間がかかる。いろいろな部署を経験し、業務全般を覚えさせるとすれば、10年程度はかかると聞く。一方、親族に後継者がいなくて第三者承継をする場合も、1年では相手は見つからない。われわれの経験では2、3年はかかる。後継者のいない経営者は60歳になったら事業承継の取り組みをした方が良いと思っている」

 「きちんと後継者のいる企業なら相談は不要だろうが、実際には『どこに相談すればいいか分からない』という人も結構いる。センターには、登録している税理士や中小企業診断士といった専門家を派遣する制度もある。センターの費用負担なので利用してほしい」

 -コロナ禍は、どのような影響を与えているか。

 「コロナは売り上げの減少という形で県内の幅広い事業者に影響を及ぼしている。先行きに不安を感じ、『廃業しようか』『親族に譲るのをやめようか』という心理状態になっている経営者が増えていると、肌感覚で感じる。金融機関や商工団体など(日頃から事業者と接している)関係機関との連携をより密接にし、事業承継を支援していく必要があると思っている」

 -センターには、県内での創業を希望する人を登録する「後継者人材バンク」も設置している。

 「現在11人が登録しているが、このうち3人が県外からの希望者。東京、神奈川、埼玉各都県の人で、農業や建設などさまざまな希望を聞いている。ただ、(事業を譲りたい経営者と)マッチングできた例はまだない。もっともっと登録者を増やす必要がある」

 -県内の中小事業者に呼び掛けたいことは。

 「連絡を受ければ、こちらから事業所に出向いて相談に応じている。会社での相談を避けたいという事業者には、地元の商工会議所や公的機関の会議室を当センターが相談場所として用意し対応している。秘密は保持するので、安心して気軽に相談してもらいたい」

 「また、県内には財務内容が良く、事業を拡大していきたいという思いを持っている事業者がいっぱいいる。(事業の)譲り受けを希望する事業者の方は、マッチング促進のため、ぜひ『譲り受け側』としてセンターに登録してほしい」

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 <のざわ・のぼる 1956年青森市生まれ。早稲田大法学部卒業後、80年にみちのく銀行入行。城下支店長、湯川支店長などを務め、2019年に県事業引継ぎセンターの統括責任者に。21年4月から現職>

青森県事業承継・引継ぎ支援センター 国の委託を受け、公益財団法人21あおもり産業総合支援センター(青森市)が設置している公的相談窓口。昨年度までは、親族内承継については「県事業承継ネットワーク事務局」、第三者による承継については「県事業引継ぎ支援センター」が担当してきたが、今年4月に統合された。新センターは15人体制。新たにエリアコーディネーターを県内6地域に配置し、支援案件の掘り起こしを図っている。電話番号は017-723-1040。