沿岸の漁場を埋め立てて構築された八戸港。港内には複数の漁港と第1~第3魚市場がある

 「気候異変」が漁業資源に大きな影響を与えることに驚愕(きょうがく)したのは20年以上前のこと。当時、八戸の大型イカ釣り船団がアルゼンチンで豊漁を続けていた。ところが、その頃から漁獲が急激に落ちてきた。衛星電話での漁労長の報告。「海ぁ、きれいだったんだよ。プランクトンもイカも消えてしまった!」。南極の氷が溶けて冷たい真水になって海を変えたらしいと続けた。

 「温暖化」がまだ認識されていなかった頃の話。しかし今では漁師は誰でも「温暖化」の影響を懸念する。

 昨年の青森県漁業士会の会合での話。沿岸のサケ漁はふ化、放流事業により安定した漁獲を続けてきた。ところが、近年は不漁が続いている。それも温暖化が一因だという。放流した稚魚は1カ月ほど湾内や前沖で回遊し、アラスカまでの長期航海が可能な体力を蓄える。ところが高水温に耐えられず、出発前に脱落する稚魚が増えてきているという。

 青森県の名産、養殖ホタテの今後を心配する漁業者も多い。外海に比べて湾内の水温は高く、海水汚染や酸性化も気になる。現に、貝殻の劣化も見られる。「気候異変」が沿岸漁業や養殖事業に与える影響を憂慮するのだ。

 前回、世界の漁獲量は急増していると述べたが、驚くべきはその内容。漁船による海面漁業を養殖の生産量が大きく超えている。しかも、かつてのいけすによる畜養だけでなく、人工種苗による完全養殖。さらには陸上養殖。気候異変にも適応できる稚貝、稚魚を成育する研究など、漁業の成長産業化に貢献しているのだ。

 八戸港は沿岸漁場を埋め立て、大漁港を建設し、大衆魚の日本一の水揚げ港となった。しかし、その水揚げが激減する現在、沿岸漁業の復興、養殖漁業の振興も重要なテーマだ。これには多くの時間と資金が必要だ。幸い、青森県には優れた研究機関も多い。異業種との連携も可能だろう。

 現在、沿岸漁協の合併が進められている。今は役員構成や出資金などが主要議題のようだが、漁業が生き残るためには総力を集めた事業の大変革を期待する。

 気候異変は、漁船漁業にも甚大な影響を与えている。八戸港が大漁に恵まれたのは、三陸沖で暖流と寒流が交わっているからだと言われた。しかし、気候異変とともに高水温化は進み、暖流は大蛇行し、寒流もはるか遠くへ。その結果、漁場は遠くなり、しかも北上。魚群は薄くなりスルメイカなどの漁獲は激減した。情報通信技術などで対応している漁船経営も厳しく、戦線離脱の漁船も多い。

 水産庁は漁業法を改正して資源管理を厳正に行い、今後10年で漁獲量を100万トン増やす計画を示した。正直、実現は容易ではない。しかし、評価すべき計画もある。今まではTAC(漁獲可能量)の範囲で早いもの勝ちだったものをIQ(個別割り当て)によって、その範囲で良いサイズの魚を計画的に漁獲できる。これにより、兼業も可能となる。ノルウェーなど成功例は多い。

 かつて、八戸のイカ釣り漁船もマグロはえ縄やサケマスはえ縄との兼業で周年操業を行っていた。ただ、懸念は中国などの外国漁船の無法操業だ。国際的な管理システムが必要だ。

 最後に私の願い。漁業者は世界を見てほしい。成長産業への道が見えるはずだ。

(八戸漁業指導協会会長理事)