フィッシュポンプを使って漁船からサバを吸い上げる第3魚市場A棟の水揚げ

 八戸港も日本も漁業は危機に直面している。昨年の八戸港の水揚げ数量はわずか6万トン余。最盛期の昭和63(1988)年の81万トンと比較すれば1割にも満たない。そして、日本全体でも昨年の300万トンは最盛期の4分の1。ところが、30年前に1億トンだった全世界の水揚げ量は今や2億トンを超える。倍増の勢いだ。

 そこで業界の指導者、大日本水産会の白須敏朗会長は「日本では漁業は斜陽だと言うが、海外では成長産業だ」と断言する。その成長産業化に日本の漁業が大きく関わってきたのだ。

 今から40年前。全国の大型イカ釣り漁業者の代表が世界のイカ資源調査に飛んだ。当時の高橋長次郎会長(故人)の弁。「カナダではイカは大西洋のゴミと笑われ、ニュージーランドではセミナーを開いてイカの可能性を教えた」。ところが今やイカは国際商品だ。イカばかりではない。多種多様な水産物が世界で消費されるようになってきた。

 また、日本の刺し身などの生食文化も普及し、すしバーは世界中で人気を呼んでいる。それに伴い、衛生管理も強く求められている。和食も国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。こうした状況を見れば、日本の水産食品の輸出の可能性はさらに大きくなったと確信する。

 八戸港に、水産物輸出の拠点として、世界最先端の衛生管理が求められるEU・HACCP(ハサップ)認定の第3魚市場A棟が建設されたのは当然のことだった。ただし、この施設が本格的に機能するには、漁船、陸揚げ施設、加工工場が全て連動して認定を受けなければならない。八戸港では1カ統の巻き網漁船が認定され、全国的にも増加すると思われていた。加工工場も検討を始めていた。

 だが、悲劇が襲った。2011年の東日本大震災だ。大津波で期待していた漁船建造や加工工場建設が遅れ、サバの大不漁が追い打ちをかけた。A棟の水揚げは計画を大きく下回った。施設の存続さえも問われている。だが、高度衛生処理による輸出の必要性は変わってはいない。

 うれしいことに現在、八戸の加工業者がA棟に特化した高品質のサバ缶の輸出を計画。また、宮城県の塩釜市魚市場も八戸のA棟に次いでEUハサップ認定を取得し、連動して静岡県焼津市の加工工場は冷凍マグロ、福島県の加工工場はカツオの加工施設でEUハサップの認定を得た。

 EUの中でも魚の輸出大国と言われるノルウェーの年間漁獲量は200万トン。多くは加工原魚として輸出している。ところが国内消費はわずか27万トン。現地を見ても魚食文化大国とは言えない。ここに、日本の水産食品進出の可能性を見る。

 昨年11月、高度衛生設備の八戸港と松浦港(長崎県松浦市)でサバのフィッシュポンプと、たも網による品質の試験調査が水産庁により実施された。その結果、八戸のA棟のフィッシュポンプ使用の優位性が報告されている。その八戸港では今年4月、沿岸の生ものを中心に扱う高度衛生化した第2魚市場D棟が稼働した。ここにも新しい可能性がある。