「社員教育や講演を通し、若い世代から教えてもらうことも多い」と話す小澤さん(バンダイナムコスタジオ提供)
ソウルキャリバーVIの一場面(SOULCALIBUR™ VI & ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.)

 人気の格闘系ゲームなど約30作に携わってきた開発プロデューサー小澤至論さん(48)=都内在住、青森市出身。最近は高校や専門学校に赴き、進路に関する講演に忙しい。「夢が見つけられない」という若者たちに「好きなもの、気になるものを追い掛けてみよう」と語りかける。

 幼いころからゲーム好きだった小澤さんだが、ゲーム開発者を夢見て勉強に励んできたわけではない。ゲーム業界に関われる都会で働こうと思い、「心配で反対する母とけんかばかりしていた」という。大卒後は大阪のゲーム会社で背景を作るデザイナー、キャラクターを動かすアニメーターを経験。2000年に東京の大手ゲーム会社ナムコ(当時)へ移籍し「鉄拳」「ソウルキャリバー」シリーズなど格闘ゲームの開発にアニメーターとして参画した。

 憧れの業界だったが「つらいことも多かった」。ゲーム好きの開発仲間が、理想と現実のギャップや人間関係に悩んで退職していくことに胸を痛め、「現場の仲間を守ろうとプロデューサーを志望した」。現場に未練もあったが、ゲームを愛する開発陣の環境整備が急務と考え決断した。

 開発総指揮の制作プロデューサーとなり、ソウルキャリバー最新作「VI」に取り組んだ小澤さん。プロデューサー職は宣伝や販売管理を巡りシビアな判断を迫られることもあるが、最後まで開発現場を信じ、ほぼ口を挟まなかったという。現場は厳しい開発条件を見事にクリア、顧客が求めるゲームを作り上げた。

 「スタッフはシリーズ好きで優秀な人材ばかり。自分は現場に『いいね』と言い続け、スケジュールと予算、スタッフの相互関係に気を配っただけ」。現場の努力と小澤さんの信頼が実を結んだ「VI」は、前作から6年を経ていたにもかかわらず大成功を収めた。

 今は社員教育も担当している小澤さん。「若手社員には、ゲームの面白さを具体的に言語化する指導をしている。企画を通すのに役立つ」。一方で学生向けの講演では、夢を持てない-と自分を責める若者を心配する。「夢を持つのはたやすいことではない。気になる事があれば取り組んでみて、夢中になったら追い掛けようと話している」。相手を否定せず受け入れる、小澤さん流のやり方だ。

 強いリーダーシップも否定しない。でも「泣き虫」と周囲に評されるほど相手の心情を考えられるから、小澤さんの周りにはいつも人がいる。「支え合えるスタッフこそが、僕の最高の資産なんです」

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 <おざわ・みちのり 1973年生まれ。青森市出身。青森戸山高校-道都大学(北海道)卒業後、大阪のゲーム会社入社。2000年ナムコ(当時)へ移籍。現在はバンダイナムコスタジオ第1スタジオ・スタジオゲームデザインマネジメント室所属。プロデューサー。講演などの問い合わせはhttps://www.bandainamcostudios.com/contactへ>