埼玉の自宅からリモート取材に応じる越谷オサムさん

 津軽を舞台にした映画「いとみち」の原作者・越谷オサムさん(49)=東京都生まれ、埼玉県在住=がリモート取材で東奥日報のインタビューに応じた。昨年12月、都内で行われた試写会で一足先に作品を鑑賞した越谷さん。「土着性があり、クライマックスまでの盛り上げ方も一級品。監督の作家性が随所に感じられ、見応えのある青森の青春映画だった」と作品の魅力を語った。

 原作は全3巻で、2011年に新潮社から第1巻が出版された。東京・秋葉原でメイドが泣いている姿を偶然目にし「泣き虫メイド」の話を思い付いたのが執筆の始まりだった。「メイドが似合わない土地を」と北を目指して津軽にたどり着き、09~13年の4年間で計50泊近く青森県に滞在。五能線に乗り女子高生の会話を聞き取るなど、細やかな取材を重ねた。

 「関東の人間は青森の人が地吹雪に震えてただひたすら耐えるイメージをすり込まれているが、思ったよりも明るい土地。寡黙な人が多いかと思えばむしろおしゃべりなくらいだった」

 映画化の話があったのは17年11月。「どんなに面白い小説を書いても周りの反応は薄いのに、映画化となると喜ばれる」と謙遜しつつ、「映画と小説は別物。原作を楽しむボーナストラックだ」と話した。

 自身のミリオンセラー小説「陽だまりの彼女」が映画化された際は撮影現場を見学したが、いとみちは新型コロナウイルス下の撮影だったため現地を訪れることができず、「ツイッターや天気予報を見ながら遠くで見守っていた」という。

 弘前市出身の和嶋慎治、鈴木研一を核とする3人組ロックバンド「人間椅子」のファンで、劇中曲に同バンドの楽曲が使用されることを飛び上がるほど喜んだ。横浜聡子監督(青森市出身)とは同バンドのコンサートで初対面し、「鬼才と言われている方なのでもっとエキセントリックな方かと思ったら、意外と大人な方でした」と冗談っぽく話した。

 原作執筆がきっかけで10年以上前から都内の三味線教室に通っている。ヒロイン相馬いとを演じた女優駒井蓮(平川市出身)のばちさばきには特に驚いた様子で、「視線や間が弾いている人のそれだった」と称賛。熱が入った演技にも引きつけられたといい、「駒井さんといとは、スクリーンの中に確かに存在していた」と語った。

 ネット上で公開に向けた県内の盛り上がりを実感しており、「相馬(いと)さんは頭の中でつくった人だが、青森の皆さんにかわいがってもらい、実は板柳町に住んでいるのではないかという気がしている」と笑顔。コロナ禍での地元の協力に感謝を示し、「興行の話は門外漢だが、原作者としては『エヴァンゲリオン』くらいを目指したい」と意気込みを語った。