海上で遭難(そうなん)した人を救ったり、不審船(ふしんせん)がいないかパトロールしたりと、海の安全を守るのが国家公務員(こっかこうむいん)の海上(かいじょう)保安官(ほあんかん)です。青森市出身の須藤美雪(すとうみゆき)さん(24)は、今年の春から八戸海上保安部で働いている新人さんです。「体力では男性(だんせい)に負けますが、失敗を恐(おそ)れず挑戦(ちょうせん)する気持ちは持ち続けたい。一日も早く仕事を覚え、立派(りっぱ)な海上保安官になりたいです」と語っています。
海上での犯罪取(はんざいと)り締(し)まりや交通安全の確保(かくほ)、海難(かいなん)救助など、海上保安官は幅広(はばひろ)い仕事をしています。須藤さんは「巡視(じゅんし)船(せん)しもきた」の通信士補(つうしんしほ)。通信機器を使い、周りの船が安全に航行しているか確認(かくにん)したり、他の巡視船や海上保安庁(かいじょうほあんちょう)の航空機との情報(じょうほう)通信を行う仕事もしています。一度出港すると、1週間以上陸に戻(もど)って来られないこともあります。「海が荒(あ)れると、船酔(ふなよ)いして気分が悪くなることもありました」と話しますが、今はもう慣(な)れてきました。必要なときは、巡視船しもきたに搭載(とうさい)している小型の高速警備救難艇(けいびきゅうなんてい)を操縦する場合もあります。
最初は警察官(けいさつかん)になりたかった須藤さん。しかし小さなころから海で釣(つ)りをしたり泳いだりしていたこともあり、大好きな海に関係した仕事をしたい思いもありました。最終的に選んだのは、「海のおまわりさん」と呼(よ)ばれる海上保安官。大学を卒業後、京都(きょうと)府にある海上保安学校で、仕事に必要な知識(ちしき)や資格(しかく)を身に付けました。
東日本大震災(だいしんさい)が起こった3月11日はまだ海上保安学校にいたときでしたが、八戸海上保安部への配属(はいぞく)が決まった日でもありました。「テレビで見たら八戸がとんでもない状況になっていて、早く自分も行って力になりたいと思ったんですが…。何もできず悔(くや)しい思いをしました」。その思いは、今は仕事を頑張(がんば)る原動力になっています。「海の厳(きび)しさと偉大(いだい)さを身をもって感じられる、面白い仕事。平和で何も起きないことが一番ですけれどね」と須藤さんは笑顔を見せました。