こちらのハートを射抜かんばかりに、口角を少し上げた美女が大きな瞳を投げかける-。江口寿史さんが描く女性は、美しく優しくて、強い=昨年9月、青森市の東奥日報新町ビル

 マンガ家、イラストレーターの江口寿史さんが描く約400点の女性画を集めた「江口寿史イラストレーション展 彼女~世界の誰にも描けない君の絵を描いている」が、13日から青森市の東奥日報新町ビル3階New’sホールで開かれる。江口さんが東奥日報の取材に応じ、40年にわたる画業について「いつの時代も女性の愛らしさは変わらない。それを描くことにゴールはない」と、強い自負をのぞかせた。

 1970年代後半にギャグ漫画でデビューした江口さんは、時代の変化を瞬時につかみ取り、ポップでスタイリッシュな画風の女性画を世に送り出してきた。かれんさとつつましさをたたえる銀幕女優の若かりしころ、少し首をかしげる80年代風カットのメガネっ子、野球帽にユニホーム姿のキュートな野球女子…。今回展示するイラスト画にも各時代を反映した、さまざまな女性たちが登場する。

 「集大成的な展示だが、女性の描き方の変遷の裏側にもっとうまく描きたいとの思いが見られるはず。僕の絵の技法の発明、苦難の跡も見てもらえたら」

 その一端として、江口さんが挙げるのが「鼻の穴」と「線」の描き方。「極端な話、鼻の穴をいかにかわいく描くかを追い続けてきたようなもの。鼻の穴の次には鼻梁(びりょう)(鼻筋)や鼻の膨らみにつながって、また新たな価値が生まれる」「線って情報なんですよ。どの線を描き、どの線を抜くか。40年はその歴史だったと言っていい」と語る。

 江口さんが描く女性像は美しさと優しさ、強さを兼ね備え、男女問わずに共感を得てきた。「女性のかわいらしさ、強さの前では何ものも、どんな男性もかなわない。僕にとって永遠の憧れ。女性に生まれなかった悔しさもあって描き続けている」と明かす。

 ファッションや化粧の流行とともに美しさやかわいさの基準は変わるが、変わらないものもあるという。「それは現在進行形の女性たちが一番美しく、かわいいということ」と語った上で「そこに絵が負けてはいけないとの思いで描いており、まだ先があって、やめ時が分からなくなる。生きている限り、女性を描き続けるのかも」と継ぐ。

 青森県には2008年に取材で訪れたことがある江口さん。「その時の青森の女性のイメージは優しくて、言葉のイントネーションがとてもいい感じだった」。イラスト展では抽選で選ばれた人の肖像を描くライブスケッチも。十数年ぶりの再訪となる今回、江口さんは令和に生きる青森の女性たちをどれほど美しく描いてくれるのだろう。

 ※「江口寿史イラストレーション展 彼女」は東奥日報社、青森放送、東奥日報文化財団主催。5月9日まで。観覧料は一般千円、高校・大学生700円、中学生以下無料。

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 <えぐち・ひさし 漫画家、イラストレーター。1956年熊本県生まれ。77年に「週刊少年ジャンプ」でデビュー。代表作に「すすめ!!パイレーツ」「ストップ!!ひばりくん!」「エイジ」など。80年代からはイラストレーターとしても活躍。有名企業などの広告、雑誌、音楽CDジャケットなどを多数手掛ける>