
一つ目の商店街「新町商店街」を東へ進む。平日の昼下がりで、人や車の通行はまばらだ。生花店「泉フラワー」を訪ねると、濱谷浩文店長の母・美代子さん(72)と従業員の大森勇耐(ゆうた)さん(31)が、色とりどりの花々とともに迎えてくれた。約40年前の開業時、通りにはさまざまな店がずらりと並び、とてもにぎわっていた、と美代子さん。「昔みたいに、街に活気が戻ってほしいけどねえ」と苦笑いする。

みちのく銀行の交差点を南へ曲がると「本町商店街」だ。少し歩くと、選挙ポスターのようなパネルを掲げている店を見つけた。「きれいであったかい写真を真心こめてつくります」と“公約”まで書かれている。自分の写真でパネルを作った大湊写真店の大湊敏行さん(46)は「今年は選挙イヤーなので、ちょっとパロディーしてみました。通りが寂しいから、通行する人たちを楽しませなきゃと思って」とニヤリ。

創業150年の老舗食器店「かくと商店」の角を東へ曲がり、商店街をちょっと離れる。町役場を過ぎ、住宅地を進むと「愛宕公園」だ。新緑を眺めながら一休み。園内にある湧き水「御膳水」で喉を潤すと、汗がすっと引いた。
公園の中心部は広い芝生広場になっていて、子どもたちが思い思いに遊んでいた。サッカーボールを追いかけていた若葉小3年の古林日向(ひなた)君(8)は「ドリブルで相手を抜くのが楽しい」、同級生の芋田脩南(しゅうな)君(8)は「メッシ選手みたいになりたい」と元気に答えてくれた。

商店街に戻り、さらに南へ。坂を下れば「下町商店街」だ。創業77年の「酒のたかば」店主・鷹場秀一さん(61)は、町内の酒店仲間とともに地元銘柄の日本酒「防雪林」を造っている。8年前に廃業した蔵元「睦鶴」の酒の特長である、切れのある辛口を再現。「お酒も町の歴史や文化の一つ。いつまでも残したい」と力を込める。

野辺地川を渡って西へ曲がり、坂を上れば「駅前商店街」だ。ちょうど夕食時。古い店構えにひかれて野辺地駅前の「さかもと食堂」に入ると、坂本よし子さん(70)がニコニコ笑顔で話しかけてくれた。駅を行き交う人々を見詰めて45年。「昔のお客さんが、また来たよ、と訪ねてくれるのがうれしい」という。一番のお薦めの「のへじ北前ラーメン」の優しい味が心にしみた。