財務分析に特化したソフトウエアを武器に起業した三上さん

 M&A(企業の合併・買収)や投資を成功に導く実務者向けのITツールで商機を開く。青森市出身の三上航弥さん(30)=東京都在住=は2019年11月、前職の同僚と2人で企業の財務分析に特化したベンチャー「Dealwith(ディールウィズ)」を立ち上げた。7月、同社初の製品となるソフトウエアの試用版を公開した。

 起業前は国際会計事務所KPMG(本部・オランダ)グループの日本法人に在籍。主にM&Aアドバイザリー、買収後の統合や分割といった支援業務に従事していた。

 M&Aなどのコンサルタントにとって、買収や投資対象の企業価値、収益力、リスクを多角的に調べるデューデリジェンス(資産査定)は案件の成否を左右する業務。対象がグローバル企業だと対価は数千万円に上る。

 企業価値や市場規模を見極めるためのデータ収集、報告書作成には膨大な時間を要する。三上さんは非効率な単純作業の多さ、それに費やす時間の長さに疑問を抱いた。

 「手軽に専門家の知識を借りて精緻な資料を作れるプラットホームを整備し、効率的に働ける世界を実現したい」。世界4大監査法人(BIG4)から独立し、自ら解決策を導く道を選んだ。

 開発したソフトウエアのうち「財務分析レポート作成補助ツール」は、データ収集から体系的な資料作成、報告書の完成までに必要な一連の作業に役立つ。試験に協力したユーザーは資料作成の作業量を「7分の1に短縮できそう」、時間の有効活用で「質の向上が期待できる」と評価した。

 三上さんは「低コストかつ素早い分析でM&A自体がより身近になる。事業承継に悩む地方の中小企業でも活用しやすくなり、雇用を守れるといった波及効果を生む可能性もある」と期待する。

 起業を志した原点は、小学生の頃に通った「青森市少年少女発明クラブ」にある。炭電池でラジオを作ったり、よく飛ぶ竹とんぼの削り方を考えたり、ロボットコンテストにも数回出場した。

 「何か不便を感じたらメモを取ろう」。発明につながる気づきの大切さを説く大里荘太郎会長(故人)の教え通り、少年時代は新たな発見を手帳に書き留めていった。「不便を解決するアイデアを常に探す習慣を発明クラブに植え付けてもらった」。大人になった今も、アイデアの種が思い浮かぶたび手帳を開く。

 自ら感じた不便さを出発点に、解決策を開発するために起業。正式版は近くリリースできる見込みだ。「何事にも興味を持ち、何でだろうと考える習慣を身に付けたら人生が楽しくなる」。探究心は尽きそうにない。

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 <みかみ・こうや 1989年生まれ、青森市出身。青森高-慶大理工学部卒。KPMGグループの「KPMG FAS」などを経て、2019年に「Dealwith」を共同設立。代表取締役CSO(最高戦略責任者)>