11日で東日本大震災(ひがしにほんだいしんさい)から5年。被災地では復興に向けた取り組みが進んでいます。大震災で被災(ひさい)した岩手(いわて)県久慈(くじ)市の地下水族科学館(ちかすいぞくかがくかん)「もぐらんぴあ」で生き残り、八戸(はちのへ)市水産(すいさん)科学館「マリエント」で避難(ひなん)生活を送っていたアオウミガメのカメ吉(きち)が、3月21日、「ふるさと」に帰ることが決まりました。「もぐらんぴあ」が今春、営業(えいぎょう)を再開(さいかい)するためです。
「すくすく育ってくれて安心しています」。マリエントの渡邉徹(わたなべとおる)課長の頭をよぎるのは、カメ吉を軽トラックに乗せ、久慈から運んできた5年前のこと。カメ吉は弱(よわ)りきっていました。
マリエントでカメの飼育(しいく)は初めて。渡邉課長はじめ、飼育スタッフの山本綾香(やまもとあやか)さん、上原沙也香(うえはらさやか)さんは不安でした。全国各地の水族館などに問い合わせ、カメ吉にとって快適(かいてき)な環境作(かんきょうづく)りに取り組みました。
現在(げんざい)−。カメ吉は、手を振(ふ)っているかのように、前足を動かしながら楽しそうに泳ぎます。エサの時間になると、スタッフに近寄(ちかよ)り好物のイカを奪(うば)うほどです。
そんなカメ吉を一目見ようと、地域(ちいき)住民だけでなく久慈からも来館が増(ふ)えました。2013年からは八戸市内の園児らが健康診断(けんこうしんだん)を行うなど、大勢(おおぜい)がカメ吉の成長を見守ってきました。
「生きようと頑張(がんば)ったカメ吉と、生きてほしいと願った周囲の思い。両方を繋(つな)げてこられたことがうれしい」と口をそろえる渡邉さん、山本さん、上原さん。「一緒(いっしょ)に成長できた5年間。ありがとう」と、カメ吉を優(やさ)しく見つめていました。