県内特別支援(しえん)学校の児童、生徒、卒業生の作品300点余(あま)りを大規模(だいきぼ)に展示(てんじ)する「アウトプット展」が先月、青森市の県立美術(びじゅつ)館で開かれました。粘土による塑像(そぞう)、毎日書き続けたイラストなど、形にとらわれない純粋な表現(ひょうげん)は、来場者をとりこにしました。
会場の一角に、目を引く立体の作品群がありました。制作者は、弘前大学教育学部附属(ふぞく)特別支援学校中学部の生徒たち。再生紙(さいせいし)を丸めて作った棒(ぼう)を曲げたり、セロハンテープでつなげて作られています。
見る角度によって景色が変わる立体は、自由でエネルギーに満ちています。じっくり観察すると、ロボットだったり、拳銃(けんじゅう)だったり、リボンだったりと作品に込(こ)めた生徒たちの豊(ゆた)かな思いが読み取れます。思いが結びつくことで、一人ではなし得なかった迫力(はくりょく)にあふれた表現が繰(く)り広げられたのです。
作品が生まれた背景(はいけい)には一人の男子生徒の存在(そんざい)があります。中学部3年の藤田(ふじた)尚斗(なおと)君(14)です。祖父母(そふぼ)の家で紙を再利用(さいりよう)している様子を見た藤田君は「何か作れそう」と思い立ちます。夢中(むちゅう)で手を動かしているうちに剣(けん)が出来上がりました。その後、いろいろな造形(ぞうけい)を作るようになりました。
藤田君によって「リサイクル・ペーパーアート」と名付けられた創作物は学校中の人気になりました。生徒たちの熱中ぶりをみた同校の坂本裕子(さかもとゆうこ)教諭(きょうゆ)は授業(じゅぎょう)に取り入れ、今回の作品につながっていったのです。
8月25日、会場で作品を見た藤田君は「紙で何か作っている時のワクワクした気持ちをクラスのみんなと共有できたことがうれしい。形になって達成感があります」と話していました。