「ネットでも楽曲をどんどん出したい」と意欲的な小笠原さん(本人提供)
ライブにも積極的な小笠原さん(右)(本人提供)

 「自分の楽曲をまとめるのは今しかない」

 昨秋、「集大成」の2枚組CDアルバムを、クラウドファンディングを使い制作・発売した青森市出身のシンガー・ソングライター小笠原ちあきさん=調布市在住。「多くの音楽家と共演した未発表曲や新曲など計34曲を収録。ファンがコーラスで参加した曲もあるんです」。楽曲発表の主流がネット配信になる中、自身の楽曲をCDの形で残す最後の機会と捉えた。

 制作の理由はもう一つある。高校生で発症し、命に関わる恐れもあった水頭症が一昨年再発した。絶望の中、交流があった人々と作った過去の作品を形にして残したいと思った。「自叙伝的なアルバムとして、仲間と作った最高の音を聴いてほしい」。クラウドファンディングでは目標を3割も上回る資金が集まった。

 活発な高校生だった。友達とバンドを作り、民放ラジオで番組も持った。「オリジナル曲がどんどん作れた」。しかし楽しい日常は病気で一変、入院などで卒業まで4年を要した。病状は落ち着き上京したが、数年後に悪化。「意識が半年なかったことも。目を覚ましても体が動かず、リハビリにまた半年」。やがて、東京で同居していたいとこの仕事を手伝い始めた。

 いとことは同郷の漫画家成田美名子さん。既にヒットを連発する売れっ子だった。成田さんのイメージ曲を作ってみると、大手レコード会社の目に留まった。

 1988年、プロのアーティストとしてデビュー。民放児童番組の挿入歌「こねこのしーにゃん」のヒットで脚光を浴びた。90年代にかけて人気を博した「サイレントメビウス」など漫画やアニメの挿入歌、イメージソングも多数作った。一方でオリジナルアルバムも精力的にリリース。ライブ活動にも熱心だった。

 病気は完治とされていただけに一昨年の再発は衝撃だった。「やはりダメなのかと」。最後のアルバムを作って燃え尽きる、とも思った。「でも完成後も新しい楽曲が次々湧いてくる。今回のアルバムは今の私のベスト、通過点だと思い直した」。病気に負けず音楽に向き合う覚悟を固めた。

 デビューから32年。素直な心を美しい詩に転化し、物語として音に紡ぐ小笠原さんの世界は揺らいでいない。「時代時代の影響を受けても、私の音楽の本質は変わらないの」。照れたように笑った。

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 <おがさわら・ちあき 青森市出身。青森東高校卒業後、1988年にシンガー・ソングライターとしてアルバムデビュー。アニメやマンガのテーマ曲、子供番組の作詞・作曲や歌唱、歌手への楽曲提供など広く活躍。新アルバム「LOVE OF A BLACK CAT~くろねこの恋~」は税込み3200円。購入はhttps://minne.com/items/19982948