「伝記ばかり読んじゃだめ?」−。中学生の創造力(そうぞうりょく)を育成する県主催(しゅさい)のサマースクール「未来ひらめき創造塾(そうぞうじゅく)」が8月中旬(ちゅうじゅん)、青森市で県内の中学生38人が参加し3泊(ぱく)4日で開かれました。最終日前夜に行われた塾長(じゅくちょう)の川口淳一郎(かわぐちじゅんいちろう)教授(きょうじゅ)(弘前市出身、宇宙航空研究開発機構(うちゅうこうくうけんきゅうかいはつきこう))の講演会(こうえんかい)から、ユニークで示唆(しさ)に富(と)んだアドバイスをいくつか紹介(しょうかい)します。
<だめな理由を探すのは、 日本人の悪いところ>
大分の動物園が英国王女にちなんで子ザルに「シャーロット」と名付け批判(ひはん)を受けた問題は、日本人の良くない特性(とくせい)を象徴(しょうちょう)していると指摘(してき)しました。
「自分自身の判断(はんだん)に自信を持てず、外からどう見られているかだけを気にしている」
<教科書、論文は過去>
川口教授は自分の研究室に入ってくる大学院生にはまず、「教科書や論文には、過去のことしか書いていない。最初の3カ月はどんなにつらくても自分で考えろ」と告げるといいます。
「伝記を読んではいけないと思う。(取り上げられた偉人(いじん)の)コピーになってしまう」
<人のふり見て、 我がふり直す「必要なし」>
日本人は論語(ろんご)が好き。「徳(とく)は孤(こ)ならず必ず隣(となり)あり」(徳のある人は孤立せず、助けてくれる人が現れる)と説く論語には、悪(わる)い影響(えいきょう)もあると指摘(してき)します。
「人と同じ事をやっていたら独創性(どくそうせい)につながらない。変人であっていい。科学技術(かがくぎじゅつ)は芸術(げいじゅつ)と同じ。無から有をつくる。不完全を楽しむことに、この分野の醍醐味(だいごみ)がある」
◇
「挑戦(ちょうせん)があって、初めてセレンディピティ(思いがけず何かを発見できる能力(のうりょく))が生まれる」。川口教授はこう講演会を締(し)めくくりました。
参加した石山隆希(いしやまたかき)君(八戸三3年)は「これまでゼロから考えることが苦手で、人の意見に流されることも多かった。これからはもっと自分の考えを大切にしたい」と川口教授の言葉に刺激(しげき)を受けた様子でした。