ロケットの模型を手に持つ寺田さん。背景は超小型人工衛星を宇宙空間に放出するイメージ図=3月、東京都内
超小型人工衛星の模型。1辺が10センチ(Space BD社提供)

 21日、鹿児島県の宇宙航空研究開発機構(JAXA)種子島宇宙センターから、国際宇宙ステーション(ISS)へ物資を運ぶ無人補給機「こうのとり」を載せたロケットが打ち上がる。東京都のベンチャー企業「Space BD」のエンジニアマネジャー・寺田卓馬さん(30)=青森市出身=は、特別な思いでその瞬間を待つ。

 同社は「宇宙商社」を旗印に掲げ、宇宙空間の民間利用や商業化の拡大を志向した事業を展開。寺田さんは「宇宙開発はこれまで国の政策でしかなかったが、人工衛星の小型化や需要の高まりによって、大企業に加え、ベンチャー企業や大学でも宇宙を利用できる時代が来ている」と語る。

 自前で製造した人工衛星を宇宙に放出したり、開発装置をISSに運んで実証実験をしたりと、民間の企業や団体の宇宙利用を実現させるため、寺田さんはJAXAの審査や手続きなど、打ち上げまでの各工程で技術的な支援を提供する。

 同社はJAXAと提携し、ISSの日本実験棟「きぼう」を活用した実験サービスも手掛ける。21日に宇宙へ飛ぶ「こうのとり」には、寺田さんが技術支援した海外企業の超小型人工衛星搭載用地球観測カメラ(重さ約20キロ)も積まれ、撮影やデータ送信など船外実験を3カ月ほど実施する。

 「カメラなど人工衛星の部品だけを打ち上げて実証実験することが一般化すれば、宇宙で何かをするハードルが下がって宇宙利用の加速が進む」

 中学の頃から科学雑誌ニュートンを好んで読んだ。高校時代、青森市内の書店で手に取ったニュートンは「きぼう」を特集していた。「人がどんどん宇宙へ行く時代が来る」と感銘を受けた。

 大学院での研究や筑波宇宙センター(茨城県)での勤務を通じて宇宙との関わりを深める一方、日本の宇宙開発は商業利用が少ないため資金が回らず、計画が進みにくい現実を感じた。「民間の活力を加速させる立場になりたい」と思い、今の会社に転職を決めた。

 寺田さんは、JAXAが打ち上げるロケット内の空きスペースに民間の超小型人工衛星を相乗りさせる事業や、一般の会社員らが趣味の延長線上で開発した人工衛星の打ち上げにも関わる。「宇宙開発を考えたこともないような人たちにも、宇宙利用の選択肢を持ってもらいたい」と語る。

 誰でも宇宙に行ける時代がすぐに到来するわけではない。「でも一つ一つハードルを下げ、ふらっと宇宙に行って仕事や遊びができるぐらい、もっと宇宙を手軽に使える環境をつくりたい。私も一度は行ってみたいですね」

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 <てらだ・たくま 1990年生まれ、青森市出身。青森高-東工大、東工大大学院卒。2014年から5年間、JAXA筑波宇宙センターで勤務。19年にSpace BD社に移籍。東京都品川区在住>