「青森県関係のアーティストで祭典を開ければ」と思いを語る佐々木さん=埼玉県ふじみ野市の上福岡西公民館
昨年11月の演奏会で「組曲」について解説する佐々木さん(右)=上福岡西公民館ホール

 故郷・八戸市の四季をテーマにした「4つのピアノ独奏曲『はちのへ春夏秋冬組曲』」を作曲した、埼玉県在住の作編曲家・佐々木信綱さん。昨年11月、埼玉県ふじみ野市で開いた演奏会で発表し、喝采を浴びた。

 童謡や歌曲、合唱曲の創作で知られ、代表曲「空の文字」は合唱コンクールなどで広く歌われている。その佐々木さんが歌詞のないピアノ独奏曲を組曲として作り上げた。

 「音楽家も美術家もあるテーマを自分の力とするもの。僕にとっては愛や死などがそれだが、生まれてから18年過ごした故郷・八戸の懐かしさも大きなテーマなんです」

 八戸工業大学第二高校時代の同級生が一昨年撮影し送ってくれた写真が、佐々木さんを揺さぶった。大須賀海岸の冬の風景。「目にした瞬間、曲を作りたくなった。演歌のような和風の曲調が浮かび、ここに生きる人々の我慢強さを打ち出したいと思った」

 冬の曲が完成すると、自然に次の季節の曲を作ろうと思った。「四季それぞれの曲を作り、組曲として披露したい、と」。はっきり思い出せる故郷の四季の風景が、頭の中で独創的な曲となっていった。「例えば春の曲は、静かにきらめく波とウミネコの鳴き声で始まり、夏の八戸三社大祭のおはやしにつながっていく」。佐々木さんは初演の演奏者に曲のイメージを把握してもらうため、実際に八戸へ連れて行ったりもした。

 幼い頃、祖父母が営む湊町の居酒屋で遊んだ思い出が原風景だという佐々木さん。やがてプロの音楽家として、顧客のイメージを尊重した曲を生み出すようになるが、「自分自身でどうしても曲を作りたくなることもある」。自らのテーマに沿う曲を作り上げ、広く聴いてもらいたい-。組曲もそうだった。

 歌唱が一切ない自身の演奏会を開くのは、組曲の初演時が初めてだった。「寝ちゃう人がいるかな、と心配もあったが、みんな飽きずに楽しんでくれた」。大好きな故郷・八戸の良さを伝えたいとの佐々木さんの思いが、曲に乗って会場いっぱいに広がった。

 「何もないと言う人が多い八戸だが、離れてみると食も風景も、住む人も全部お宝。外に住んで初めて価値が分かった」と佐々木さん。今、大きな夢を大事に育てている。「私のように故郷を愛し、自分の活動を通して故郷を応援している関東在住の県人は少なくない。いつか、青森県出身アーティストを中心とした団体をつくり、定期的に演奏会を開きたい」。瞳が八戸の海のようにきらめいた。

 「組曲」の1曲など佐々木さんの楽曲の一部は公式ウェブサイト(nobutsuna.jimdo.com)で試聴できる。

 ◇

 <ささき・のぶつな 1975年八戸市生まれ。オフィスカムオンミュージック(東京)代表。埼玉県川越市在住。八戸工業大学第二高校卒業後、大学などで音楽を専攻。日本童謡協会に加入し、会長を務めた中田喜直らと交流。一方で学生時代からコンピューターを用いた作曲に取り組むなど幅広い分野の楽曲を制作。「空の文字」「ゆき」「私と小鳥とすずと」など作品多数>