短命県返上の最大の鍵を問われれば、躊躇(ちゅうちょ)なく「子どもへの健康教育」と答えます。
成人は、健康に「関心あるグループ」は3割、残りの7割が「関心なしグループ」です。
「関心あるグループ」は毎年健診を受けますから、新しい病気が見つかる確率は低いです。一方、「関心なしグループ」は、たくさんの病気を持っています。進行した病気も多いです。
短命県返上を本気で目指すのならば、この「関心なしグループ」を何とかしなくてはいけません。
しかし、しかしです。それが一番難しい。
ということで、一番良い方法は、3割と7割に分かれる前、つまり子ども時代に対策をとることです。
もう一つ、子どもへの健康教育が大切な理由があります。
青森県では中年層(40~60代)の死亡率が高いのですが、その死因の6~7割は3大生活習慣病(がん、脳卒中、心臓病)です。
生活習慣病発病には長い時間がかかります。たとえば喫煙の場合、それが命に影響を与えるまでの時間は30~40年ぐらいでしょう。したがって、中年層の対策には、健診や病院受診に加えて、30~40年前からの根本対策が必要です。つまり学校です。
たとえば、骨粗しょう症を防ぐためには骨が完成する高校生ぐらいまでに骨を固く、強く、大きくしておく必要があります。そのためには運動と食事が大切です。子どもは、骨が弱くても痛くもかゆくもないのですが、高齢になると、簡単に骨折して寝たきりになる人と、そうでない人に分かれます。
ですから、子どもの時にその知識を教え運動をさせることが大切です。人生をいかに上手に生き抜くか、その術を教えるのが教育ですから。
しかし、ここで一つ大きな問題があります。それは、若者は健康に興味がないということです。だからこそ、教育が必要なのです。興味なくとも九九を習うことと同じです。
青森県では、今100ぐらいの小中学校で健康授業が行われています。
この盛り上がりの始まりは、黒石市の中郷小学校の当時の山内孝行校長先生からのお誘いでした。
打ち合わせではどちらが主体に授業を行うかが議論になりました。「中路先生やってください」と。「いや無理です。われわれはプロではありませんし、万一、うまくできたとしても、その後の広がりが期待できないでしょう」
結局、担任の先生が指導案を作り、主導権を取り、専門分野をわれわれが手伝うことになりました。
驚きました。実際にやってみると5年生の理解度は大人並みでした。また望外の喜びは、子どもたちが親に話を持っていったことです。「お父さん、たばこは体に悪いらしいよ。やめたら」と。若い親は、健康に関心がなくとも、子どもには耳を傾けます。
このような流れの中で中南地区連携推進協議会が発足し、弘前大学教育学部、中南地区の教育委員会と連携した健康教育が行われるようになりました。
学校での健康教育を充実させるだけで短命県は脱出できるはずです。