「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」ということわざがあります。それでは、どうして日本第2位のリンゴ生産高の長野県が最長寿県なのに、日本一のリンゴ王国青森が最短命県なのでしょう?

 答えは簡単です。リンゴは寿命とあまり関係ないのです。先のことわざは数百年前のヨーロッパのことわざです。その当時はヨーロッパも食料不足で、秋に実るリンゴは食料源として有難く、健康のために良かったと思われます。

 ところが、ご存じのように、今日本は“飽食”という有史以来初の時代を迎えています。リンゴ1個を食べたくらいで長生きできるような簡単な時代ではないのです。

 それでは塩はどうでしょう。短命県返上のテレビ番組では、まず青森駅前で街頭インタビューがあります。県民の答えはほぼ決まっています。「漬物、ラーメン、ラーメンのつゆ」。これすべて塩のことです。青森県民が食塩を好むことはいまや有名な話です。

 じゃあ、長野はどうでしょうか?

 実は、長野も“塩王国”で、塩分摂取量は青森とあまり変わらないのです。

 海なし県の長野は、昔から海の幸は塩漬けで運ばれてきました。あの芸術品、野沢菜の漬物もあります。

 じゃあ、リンゴと同じで塩は関係ないのかというと、そうはいきません。関係あります。塩は血圧を高くし、万病につながります。

 じゃあ、なぜ、長野は長寿県なのか。その答えは?

 答えは総合力です。長野の苦手は塩だけですが、青森の苦手は、塩プラス多量飲酒、肥満、運動不足、喫煙などです。そのほかにもあります。健診の受診率は全国的に見ると高くありません。初診時にがんの進行例が多い。また、重症糖尿病が多く、ちゃんと通院していないことがうかがわれます。

 学校では、国語、英語、数学、理科、社会と試験を受けて総合点で順位が発表されますが、長野の場合は、英語は苦手でも他教科の成績がいいので一番になれるということです。

 表に青森・長野両県の健康関連指標の都道府県ランキングを示しました。ほとんどの指標で長野県が青森県を上回っています。

 社会力の差を見せつけられているようです。この総合力を反映したのが平均寿命です。ですから、問題の根は深く大きい。解決は簡単ではありません。

 例えば、喫煙率を下げるにはどうすればいいのか。たとえ、喫煙の健康被害の記事を新聞や広報に載せても喫煙者は間違いなくそこを読みません。ここに短命県返上の難しさがあります。

 氷山を思い浮かべてください。海面に突き出た氷山は全体の1割で、そこに喫煙などの生活習慣、健診・病院受診などの問題があります。しかし、残りの9割の基礎の部分に、文化、教育、経済、気候など大きな社会問題が含まれています。その部分に手を突っ込まないと解決(短命県返上)は望めないのです。