第1回日本オープンイノベーション大賞(内閣府主催)の最高賞、内閣総理大臣賞を今年2月、弘前大学を中心とした短命県返上メンバーが受賞しました。全県を挙げた短命県返上活動が日本一として評価されたのです。
このようなことで今、青森県の短命県返上活動は全国の注目を集めています。
そこで、本連載では、青森県の短命県返上活動の10年間を振り返り、本活動の現状と将来像を今一度、お考えいただきたいと思います。
また短命県の話かと言わないで、しばらくお付き合いください。なぜなら、その中には、青森の明るい将来を感じさせるたくさんの話題があるからです。
まず、全40市町村で市町村長による健康宣言が出されました。青森県だけの現象です。
その効果もあって、今年5月の保健協力員の全県研修会の参加者数は、5年前の2倍に達しました。市町村の健康づくりの勢いを表しています。
学校での系統的・包括的な健康教育も、県下約100の小中学校で行われています。
一方、2017年、県は“健康経営認定制度”を創設しました。認定企業には県の入札ポイントが与えられます。
これを機に、県下の職場の健康づくりが一挙に勢いづき、約200の認定企業が誕生しました。
健康づくりには、市民の仲間が必要です。長寿県・長野にはこの仲間(保健補導員、食生活改善推進員など)が10万人以上います。
そのようなわけで、三村申吾知事と県医師会の齊藤勝会長の肝入りで、15年、「県医師会 健やか力推進センター」が創設され、健康リーダーの育成が始まりました。
産官学民という言葉があります。「産」は企業、「官」は市町村や県、「学」は大学、「民」は県民・市民です。今、青森県では、この産官学民が短命県返上のために大きく強く連携しています。一つの奇跡だと思います。
地元マスコミからの応援にも大きな勇気をもらいました。以前は、「医師不足」一色だった新聞記事にも、短命県返上という難しいテーマが取り上げられています。
今年5月の日本経済新聞の「大機小機」というコラムで、「青森県の取り組みを、好事例として他地域の取り組みの参考にするのもいいが、国の政策体系に位置付け、ナショナルプロジェクトとして推進してはどうだろうか」と書いていただきました。
短命県返上、確かに難しいです。正直、まだまだと感じることもあります。でも、三村知事を中心に行われているさまざまなチャレンジは今、確実に実を結んできています。最長寿県・長野との平均寿命の差が大きく縮まってきたことがその成果です。自信を持って前進しましょう。
私たちには、この県の人間としてプライドがあります。
◇
<なかじ・しげゆき 弘前大学大学院医学研究科特任教授。1979年同大学医学部卒。2004年、同科社会医学講座教授。12年2月から同科科長、17年4月から現職。18年6月から県総合健診センター理事長。県医師会 健やか力推進センター長>