弘前公園に所狭(ところせま)しと咲(さ)く桜(ざくら)。同園の桜は、約100年前から人々に愛されてきました。この桜の木の命を見守っているのが桜守(さくらもり)です。
代々受け継(つ)がれてきた桜守の知識(ちしき)と技術(ぎじゅつ)を受け継ぐのは、樹木医(じゅもくい)・橋場真紀子(はしばまきこ)さん=大鰐町出身=(42)です。橋場さんは、弘前市公園緑地課に昨年発足(ほっそく)した「チーム桜守」の一員です。
同園に桜の木は、約2600本あります。そのうち、主役ともいえるソメイヨシノは約1700本。ソメイヨシノは寿命(じゅみょう)60年といわれてきましたが、樹齢(じゅれい)100年以上のソメイヨシノが300本以上残っています。
「古木に若々(わかわか)しい花が咲くのは、念入りに手入れしているからです」と橋場さん。枝(えだ)の剪定(せんてい)、肥料(ひりょう)やり、病気の根の切り取り、土の入れ替(か)えなど管理技術(ぎじゅつ)は今や「弘前方式」として広く全国に認知(にんち)されています。
橋場さんは「桜の木が発するどんな小さなシグナルも見逃(みのが)したくない」と、毎朝、広い園内の見回りを欠かしません。そして、傷(きず)ついたり、元気のない木を治療(ちりょう)します。いま、特に気にかけているのが、樹齢130年を越す最古のソメイヨシノです。より栄養が吸収(きゅうしゅう)しやすいようにと、昨年、病気の根を切り、土を入れ替えました。「枝を見ると一生懸命(いっしょうけんめい)生きていることが伝わってくる。今年はどれくらい花を咲かせてくれるか楽しみ」と真剣(しんけん)な表情(ひょうじょう)で花芽を見つめます。
高校卒業後、いったん、橋場さんは植物と関(かか)わりのない仕事に就(つ)きました。しかし、大好きだった自然に携(たずさ)わる仕事がしたいと、25歳(さい)で樹木医になる決心をしました。弘前城植物園で7年間経験を積み、2度目のチャレンジで夢(ゆめ)をつかみました。橋場さんには子どもが3人います。仕事と家庭の両立は大変なときもあるそうですが、好きなことができることは何ものにも代え難(がた)いそうです。
橋場さんは「現在(げんざい)の手入れが何十年、何百年後の桜の命に直接(ちょくせつ)関わるので気が抜けない。みなさんの記憶(きおく)に残る桜の木を育てたい」と話していました。