行けども行けども…ようやく半分
疲れ果てて、変な体操をする変な人たち
クマに注意。マンガチックだけど、これ、マジですw
ゴール直前にアップルパイとコーヒーでくつろぐ。このあと地獄が
50キロのゴール後は、十和田バラ焼きの肉の山に登るwww

 「十和田湖一周歩くんだけど、行きますよね?」。こんな、軽〜い感じで友人のお誘いを受け「いいっすよ」と安請け合いしたのが6月。十和田湖…青森県と秋田県にまたがっていて、乙女の像がシンボルで、奥入瀬渓流がいい感じで…と、地元に生まれ育ちながら、薄〜い知識しか持ち合わせていないけど、一周って何キロあるんだっけ。確認すると、「ご、ご、50キロぉ?」。まあ、距離はともあれ「ネタになりそう」程度の軽ーい気持ちで参加したが、来年で40回の節目を迎えるはずのこの大会、今年で終わってしまう可能性があるのだという。

 十和田湖ウオークは、青森県内で最も早くできたウオーキングクラブ「MTC21」主催。同クラブは1978(昭和53)年設立で、1981年から「シルクロードウオーク」を決行、中国・莱西をスタートし、8次にわたり通算2500キロを超える距離を歩いているメンバーが、十和田湖ウオークの運営を支えている。

 自分史上最高の、未踏の距離に挑んだのは7月24日。午前2時起きでスタート地点の「休屋」へ行き、友人グループ7人で受け付けを終え、全力のラジオ体操(笑)で身体を温めエントリーナンバーの早い順から順番にスタートした。今回の参加者は約900人で想像以上に多いが、これまで最高1500人参加した年もあったという。出発は午前5時、完歩のリミットは12時間後の午後5時。出発に際し、主催者側から特に注意されたのが「ポケモンGO禁止」と「クマに注意し、一人で行動しない」だ。特にクマについては今春から複数の犠牲者が出ており、シャレにならない。

 スタート地点から最初のチェックポイントの「子(ね)ノ口」まで11.7キロ。この辺はほとんど平坦な道なので余裕でクリア。次のチェックポイントまでが難関で、標高1010.6メートルの御鼻部山まで12キロの登り坂が続く。何度もドライブで通った道だが、車でも息切れするような坂だけに、歩を進めるごとに口数が少なくなっていく。それでも、薄曇りで暑くも寒くもない気温に助けられ、順調に距離を稼いで第2チェックポイントにたどりついた。

 ここまで約4時間半。バナナとおにぎりで栄養補給し、次のポイントを目指す。最大の登りを越えて、後は楽勝と思ったが、実は地獄はここから。下り坂がじわじわと脚に効き、膝裏とすねの筋肉がきつくなり、歩くのがつらくなってくる。しかも、早足で下る際、ズルッと足裏に嫌な感覚が。右足のど真ん中の皮浮き、水ぶくれになっていた。以降、右足をかばって歩くのでますます体力が削られた。

 途中の休憩ポイントで味噌汁とキュウリの漬け物をいただき、秋田県側の下り途中にあるトンネルでは、スタッフが爆竹を鳴らして出迎えてくれた。「中国かっ」と心の中で突っ込んだら、クマが2頭出たという。主催者側のサポートに感謝しながら「危険地点」を足早に(速くなかったけど)通過し、第3チェックポイントの大川岱に。休憩を取ったことで少し元気になったが、立ち上がろうとしたら脚が言うことを聞かない。何とか歩くが、かなり年配と思われるお年寄りや小学生らしき子どもたちにも軽々追い越されていく始末。一緒に歩いたメンバーも「これは俺の身体じゃない!だれかがハッキングしてる」と意味不明なことを叫んだり、「アップルパイ」「十和田バラ焼き」とうわごとのように繰り返す。

 とにかく気力で一歩ずつ前を進むと「この坂を越えれば、ゴールは目の前」と教えてくれる人が。その言葉を信じて坂越えし、降りた場所が「西湖畔遊歩道」の表示がある駐車帯。ひと足先についた仲間が呆然と対岸を眺めている。指さす先に、ゴールの「休屋」が見える。がっくり絶望しながらも、残り「5キロ」「3キロ」とゴールに近づいていく。そしてあと「2キロ」。ゴールの時間制限までは2時間。と、なぜかメンバーは、ゴールでなく手づくりアップルパイがおいしいカフェに向かう。どうしてもここのを食べないといけないらしい。湖畔沿いの席に座り、アップルパイをシェアしながらコーヒーを飲む至福のひととき。そしてまた地獄のひとときへ。足がこわばり、幅約3メートルの道路も素早く横切れない。歩く姿は、高齢者。思わぬところで近い将来の「老後」を疑似体験できたのも、貴重な体験だ。

 歩数6万歩超、万歳しながらの50キロのゴールはやはり、達成感大。しかし、この形で行う「十和田湖ウオーク」は今年で最後で、次回から一般募集をせず、MTC21会員の有志のみで十和田湖を歩く予定という。MTC21の会員高齢化、ボランティアスタッフの負担増加、そしてなにより、地元からの協力が得られないのだという。県外や他地域からの参加者は現地に前泊するだろうし、飲食も含め、観光業が沈滞傾向の十和田湖にとってメリットがあると思うのだが…。国立公園に外国人旅行者を呼び込む環境省の「国立公園満喫プロジェクト」モデル事業実施が十和田八幡平を対象にすると決まったばかり。ウオーキング愛好者にとっても、地域にとっても、何とももったいない話だ。(C)