八戸市是川地区を訪れる青銀の移動店舗車
青銀の移動店舗車の内部。ATM1台と窓口があり行員が応対している

 昨年11月29日午前、青森県八戸市是川1丁目の閉店したスーパーの敷地内。市内でも著しく高齢化が進むこの地域に、青森市の本店を出発した青森銀行の移動店舗車「あおも~びる」が訪れた。是川地区は青銀が18年7月に是川出張所を5キロほど離れた類家支店に統合、青銀もみちのく銀行もない地方銀行「空白地帯」だ。

 現金自動預払機(ATM)1台と銀行窓口を備えた3トントラックは、スタッフ3人を乗せて毎週金曜日にやってくる。トラック内の窓口には行員1人が座り、定期預金の申し込みや書き換え、住所変更など実店舗に近い個人取引サービスが受けられる。

 是川団地に住む男性(71)は「月1回くらいお金を引き出している。このトラックが来ないと、類家支店まで行かなければいけないから困る」と話す。車を持っていないという女性(86)は「人口が減り、銀行が店を閉めるのは仕方ない。ただ、バスの本数も減っていて街に出るのは大変だ」と語る。

 是川地区は、食品の移動販売車も曜日限定で出店しており、人口減少や少子高齢化が進んだ地域の姿を如実に表す。こうした地域で、地銀は、店舗を撤退したり、法人営業部門を規模の大きな店舗に集約するなど、経営効率と顧客利便性とのバランスに試行錯誤を続けている。

 店舗数をみると、青銀は1998年の113店をピークに今は95店に減少。みち銀は2006年の117店がピークで94店となった。「来店客数は10年ほど前と比べて2~3割は減っている」(青銀営業統括部)のが実態で、青銀は22年3月末までに80店体制、みち銀は24年3月末までに60店体制にする方針を掲げる。

 従来型の銀行店舗は、窓口、融資、渉外の3部門による「フルバンキング」体制だった。しかし両行はここ10年ほどで、個人取引に特化した店舗や休日に住宅ローンなどの相談に応じる拠点を整備し、一部の小規模店や出張所で昼休業を導入するなど徐々に店の姿を変えている。

 インターネットバンキングやスマートフォン決済の普及とともに、銀行自前のATMも減っている。青銀は1999年の479台をピークに現在は354台に、みち銀は2006年の497台のピークから367台になった。一方で両行は「○○ペイ」といったスマホ決済アプリとの口座連携を進めるなど「非対面チャネル」の強化を図る。みち銀は18年にスマホで普通預金の取引明細が確認できるアプリ「デジタル通帳」も導入しており、紙の通帳を持たない「無通帳」時代に向かいつつある。

 この変化を金融関係者は「青銀とみち銀の店舗が並んであるような出店競争時代は終わった。今は閉める店をどこにするかを考えている」とみる。青銀は「統廃合は個人取引特化店が多い。フルバンキング店は専門的な相談機能を高める」、みち銀は「各地域に合った店舗機能を考えている。数は踏み込んで減らしていく」との方針だ。

 青銀の移動店舗車は幸畑地区(青森市)と尾上地区(平川市)にも訪れ、撤退した店舗の補完機能を果たしている。青銀の南憲治営業統括課長は「店舗統廃合した地域にはどうしても不便をかける。近くの店に出向くのが難しい高齢者もいるので、今は緩やかな移行の過程にある」と話す。

▼持続可能なモデル模索

 青森銀行とみちのく銀行の関係に「地殻変動」が起きている。2019年10月、両行は包括的連携の検討を発表し、同年12月から現金自動預払機(ATM)利用手数料の相互無料化を拡大する協議に着手した。みち銀は19年9月中間決算で最終赤字を計上。両行は、超低金利や人口減少で収益環境が苦しい中、生き残りへの道を探っている。全国で地銀の連携や統合が相次ぐが、金融庁は「持続可能なビジネスモデルを銀行自身が考えるべきだ」としている。

 近年、青銀もみち銀も3月通期の当期純損益(銀行単体)は右肩下がり。16年に日銀のマイナス金利政策導入の影響で超低金利が長引き、銀行収益の根幹である貸出金利で稼げなくなっている。不良債権処理費の増加も足かせだ。直近の19年9月中間決算で青銀は16億8700万円の黒字、みち銀は13億5300万円の赤字となった。

 赤字決算を受け、みち銀は役員報酬と行員の19年冬のボーナスの大幅なカットを余儀なくされた。公表はされていないが、複数の関係者によると、職位などによって異なるものの3、4割程度減った行員もいるとされる。

 銀行は、貸し出しの金利、有価証券などの運用、手数料収入を収益の三本柱とする。特にみち銀は有価証券運用がうまくいかず、20年3月期決算で27億円の評価損を処理し、純損益40億円の赤字を予定する。09年に金融機能強化法に基づいて200億円の公的資金を受けており、その返済も経営課題で、収益構造の改革が急務となっている。

 こうした苦しい状況下、青銀とみち銀は包括的連携により、08年に始めたATM利用手数料相互無料化の拡大のほか、伝票・帳票類の共同化なども検討し、コスト削減を図っていく考えだ。

 一方で、両行は新たな収益源の模索に力を入れる。企業のコンサルタント業務の強化による手数料収入アップを狙ったり、従来は融資が難しかった分野の農業や創業、衰退した温泉街の再生を支援するなど、将来の融資先を地道に開拓する取り組みが目立つ。

 20年の通常国会には、独禁法の適用を緩和してシェアが高くなっても地銀の経営統合を10年間の時限措置として認める「特例法案」が提出される。金融庁の担当者は「いろいろな選択肢を提示して、持続可能な方法を検討するための後押しをするということ。統合も一つの選択肢。地域全体の金融をどうしたいのか、目的をはっきりさせ、それを実現する手段を選ばないといけない」と説明する。

 18年に金融庁の有識者会議は、青森県など23県を1県1銀行でも存続が困難な地域として試算した。金融庁関係者は「あくまでシミュレーション」とし「置かれている経営環境が変わっているのに、今まで通りのビジネスモデルでやっていたら終わる。自ら考えてほしいというメッセージだ」と話す。

 県内のある金融機関幹部は「青銀とみち銀は基幹システムが異なるし、預金、貸出金の規模は同じくらい。そう簡単に統合とはいかない。企業風土も違う。だからまずは連携の拡大なのだろう」とみる。

 別の金融筋はこう語る。「将来的には両行の統合もあるかもしれない。これからの業績次第だ」