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魚屋さん/漁師と料理人のバトン役 (2014年9月2日掲載) |
今回取り上げるのは、青森市の鮮魚(せんぎょ)店「塩谷魚店(しおやさかなてん)」で働く塩谷孝(たかし)さん(47)。塩谷さんの仕事は、魚市場などに魚を仕入れに行き、お客さんの用途(ようと)や希望に沿(そ)って魚を販売(はんばい)することです。鮮魚店の一日は、みんなが眠(ねむ)っている明け方から始まっているんだよ。
午前3時半。塩谷さんは、すでに魚市場を駆(か)け回っています。所狭(ところせま)しと並(なら)ぶ魚の中から、色、つや、うろこの出方を見極(みきわ)め、生(い)きの良い魚を競(せ)り落(お)とします。同6時半、店に戻(もど)った塩谷さんは、注文書を確(たし)かめながらてきぱきと魚を仕分けていきます。
塩谷魚店の主な取引先は県内のホテル、日本料理店、レストランです。魚の9割(わり)以上は本県産というこだわりに加え、小川原湖の天然ウナギ、天然ハマグリなど県内産の珍(めずら)しい魚類を多く取りそろえています。その強みを生かし、数年前から全国各地のレストランとも取引を行い、販路(はんろ)を拡大(かくだい)しています。
交通網(こうつうもう)の発達で、今や早朝に発送した魚は、同日午後には都内に届(とど)くようになりました。
塩谷さんは、鮮度(せんど)とうま味を長く保(たも)つ「神経(しんけい)〆(じめ)」という処理技術(しょりぎじゅつ)を身につけたり、魚の肌(はだ)を傷(きず)つけないように冷やした軍手をつけてさばくなど、魚が一番おいしい状態(じょうたい)でお客の手元に届(とど)けるために工夫しています。
塩谷さんは19歳(さい)のとき、父・弘さんが営(いとな)む同店で働き始めました。当初の塩谷さんは「魚が好きか、この仕事が好きか自問自答していた」と言います。
鮮魚店の仕事は、どちらかと言えば地味です。朝早くから夕方まで働きっぱなしの日もあり、体力勝負です。
一方で、漁師(りょうし)さんから受け取った魚を、料理人など使い手の希望に添(そ)った処理をして手渡(てわた)すという大切な“バトン”の役目を担(にな)っていることが徐々(じょじょ)に分かってきました。どこか迷(まよ)いがあった塩谷さんですが、今は胸(むね)を張(は)って日々の仕事に専念(せんねん)しています。
塩谷さんは、魚の漁獲量(ぎょかくりょう)が減少(げんしょう)していく中、捕(と)りたいだけ捕るという時代は終わり、資源保護(しげんほご)の視点が重要になると考えています。その上で塩谷さんは「限(かぎ)られた漁獲の中で、よりおいしく魚を味わってもらうため、知識(ちしき)や技術(ぎじゅつ)を深めつつ、漁師さんや取引先と連携(れんけい)しながらやっていくことが大切になる」と話していました。
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