給食を食べる広島市立小の児童。「会話を楽しんで食べる」のが理想だが…(中国新聞社提供)

 「もぐもぐタイムって知っていますか」。広島県内の小学校に子どもを通わせる40代女性から、東奥日報紙「あなたの声から『フカボリ』取材班」のパートナー社、中国新聞に問い掛けのメールが届いた。カーリングで話題になったおやつの時間のことではない。この学校では「給食中におしゃべりしてはいけない時間帯」を言うらしい。「給食は会話しながら楽しんでほしいのに」と女性。黙って食べるのはどうしてなのか。

 ちょうど昼時、この学校を訪ねた。子どもたちが元気いっぱいランチルームに集まってきた。もぐもぐタイムは「いただきます」から約10分間、クラシック音楽が流れ、子供たちは黙々と食べていたが、音楽がやんだ途端ににぎやかな場に戻った。「ごちそうさま」までの残り10分はおしゃべりを楽しんでいいそうだ。

 「食育は大切。きちんと味わい、嫌いな食材も成長に必要な量だけは頑張って食べてほしい。マナーも学ばせたい」と、校長は説明する。「だから落ち着いて食べる時間が要るんです」

 他の学校はどうか。広島市立の全142小学校にアンケートしたところ、回答した106校のうち、給食中に私語をしない時間を「設けている」「一部の学年、学級で設けている」としたのは、71.7%の76校あった。

 低学年を中心に5~10分間とする学校が目立ち、「かみかみタイム」「ぱくぱくタイム」など呼び方はさまざま。狙いは▽残さず食べきり、栄養を十分とらせる▽食べ物を大事にする気持ちを育む▽食事マナーを定着させる▽そしゃくの推進-といった答えが返ってきた。

 文部科学省の「食に関する指導の手引」を見ると、これらを身に付けさせるよう求めており、1954年施行の学校給食法では「栄養改善」だった給食の主目的が、2008年の大幅改正で「食育の推進」に転換したことが背景にある。

 ただ、給食指導はそう一筋縄ではいかないらしい。教員に個別に尋ねると「口から食べ物を飛ばしながら食べる」「おしゃべりに夢中になると一切はしが動かない」「立ち歩いて人にちょっかいを出す」という子供たちに悪戦苦闘する姿も見えてきた。

 給食に充てる時間として市教委が示す目安は50分。準備と片付け時間を除けば、食べる時間は20~25分だ。おしゃべりを楽しむ時間を担保しながら、集中して食べる時間も設ける-。もぐもぐタイムは、こうした課題をこなすための工夫とも言えそうだ。

 昭和の教室では、掃除の時間になっても泣きながら給食を食べさせられていた子どもがいたといい、心の傷になりそうな光景に比べれば、時間内に集中して食べる実践の方が子どもも受け入れやすいだろう。

 ただ、もぐもぐタイムも押しつけになっていないか。市内の40代男性からは「娘は『給食が楽しくなくなった』と不満ばかり言う」との声が寄せられた。担任が、ただただ私語を厳しく禁じて息苦しいと言う。子どもが強制と感じ、負担になれば逆効果だ。

 家庭も、学校に任せきりではいられない。文科省の手引には前置きがあった。「食に関する問題は、言うまでもなく家庭が中心となって担うもの」。学校が培う食育のノウハウを家庭も共有できれば、もぐもぐタイムを1分でも短くできるかもしれない。 (中国新聞社提供)