JR五所川原駅前を、歩行器を使って歩く角田さん
階段を昇降機を使って上る角田さん(手前)=角田さん提供(写真の一部を加工しています)

 「車いす、歩行器利用ではとても五所川原駅を利用できません」。青森県五所川原市在住の男性からフカボリ取材班に、駅の身障者対応改善を求める声が届いた。駅はJR五所川原駅と津軽鉄道の津軽五所川原駅が隣接しており、列車に乗車するには共用跨線橋(こせんきょう)の急な階段の上り下りが必要。JRは電動の昇降機で、津鉄では人力で対応している。「せめて、昇降機を津鉄でも使えれば」と男性は話すが、両社などの話を聞くと、そう簡単にはいかない事情もある。

 声を寄せたのは、同市金木町在住の角田憲勇(けんゆう)さん(48)。10年ほど前、運動能力が徐々に低下する「脊髄小脳変性症」を発症。その後、背骨や大腿(だいたい)骨を骨折し、自立歩行が難しくなった。体の軸が安定せず、手足も細かく震える状態で、家の中の移動は壁伝い、外出時は歩行器を使いゆっくり歩く。

 発症は、秋田市が本社の企業で営業職をしている時で、事務系の部署に異動したものの結局退職。体調に合わせて働ける職場が青森県内で見つからず、首都圏に出た。しかし昨年の西日本豪雨災害を目の当たりにし、1人暮らしに不安を感じ今年5月に帰郷、実家で父母と3人で暮らす。

 JR側では、階段を上る際に無限軌道式の階段昇降機が利用できるが、津鉄側には無い。ホームに向かう跨線橋は両社共用。ならば、JRの昇降機も共用できないものか。

 JR五所川原駅を統括するJR東日本秋田支社の広報担当によると、昇降機は数百キロの重さがある。跨線橋は一体のように見えるが、JR側と津鉄側では構造が違い「荷重に耐えられるか不明。津鉄側からもそうした要請は無い」。このため現時点で貸し出す話には至っていないという。

 津鉄側は、角田さんに限らず「以前から要望はあった」とした上で、JRの昇降機について「大きな機械なので、もし借りて何か事故があれば、という心配がある」。バリアフリー対応をするには、階段のみならず電車とホームの段差など、改修が多岐に及び、多額の投資が必要。クラウドファンディング等で資金調達をしても、維持、メンテナンス費用が継続してかかるだけに「はっきり申し上げると赤字会社であり、厳しい経営状況の中、人力で対応するのが現状では最善の選択」と理解を求める。

 街づくりの観点で、五所川原市はどう考えているのか。現在、市は10年間のグランドデザインとなる「市総合計画」の後期計画を検討しており、2020年度から開始となる。市企画課では、公的施設についてはバリアフリー化が基本としつつ、民間の建物にまで計画は及んでおらず「事業者に対し啓発をしていく」。市福祉政策課でも、移動支援や同行援護などは行っているものの、基本的にソフト面の対応にとどまる。

 角田さんは「JR、津鉄いずれも利用は事前申し込みが必要で、通勤など毎日利用するには無理がある」と話す一方、「財政上の問題などで対応が難しいことは分かっている」と説明。「健常者も障がい者も、ともに暮らしやすい街づくりのため、さまざまな立場の人が同じ方向性で、知恵を出し合う場づくりができれば」と期待する。

 角田さんは駅への階段昇降機設置を求める署名活動を行っており、初期目標の1800件を超え、3000件に達している。10日、署名をとりまとめ、市に提出する予定。