福島県小野町の小野高(小針幸雄校長、生徒数244人)は、約2100キロ離れた沖縄県石垣市の八重山農林高と連携し、特産品を生かした菓子やパンなどの6次化商品を開発した。生徒が育てた農産物を原料に、郷土料理を組み合わせた。若い感性でユニークな商品を生み出すとともに、石垣市の文化や歴史に触れ、経験を積む。高校同士の交流は小野町と石垣市の都市間に発展し、広がりを見せる。

 小野町出身で名誉町民の小泉武夫東京農大名誉教授が石垣市の「経済大使」に委嘱されている縁で、小野高は2016年12月に八重山農林高と友好協定を結んだ。両校とも地場産品を生かした加工食品づくりに熱心で、相乗効果が生み出されると考えた。友好協定に基づき、生徒10人は毎年、石垣市を訪れ、交流している。

▼コラボで付加価値を

石垣市訪問を前に、商品を試食する生徒たち=9日、小野町・小野高
商品のPRに向け、特徴などに関し意見を交わす生徒たち=9日、小野町・小野高
 

 交流3年目には、小野高と八重山農林高双方の材料を用いた商品の製造、販売が実現した。小野高で栽培したコメ「ひとめぼれ」の米粉と、石垣市のサツマイモ、タピオカ、鶏卵を使い、マドレーヌ、絞り出しクッキー、サツマイモケーキ、米粉パンを創作した。クッキーは小野町のエゴマと石垣市の黒糖でできており、カリカリとした食感が特徴。米粉パンの上には、町内に咲く八重桜の花弁を用いた桜の塩漬けがのっており、しょっぱい味がアクセントになっている。

 小野高はこれまでも、各家庭に伝わる「一升漬」をアレンジした「一笑漬(いっしょうづけ)ドレッシング」やミネラル野菜を使った「ミネラルトマトうどん」を開発してきた。訪問をきっかけに、小野町特産物と「石垣の塩」をコラボレーションした「味噌(みそ)」、「桜の塩漬け」などを作り、新たな魅力を加えた。

 6次化商品を開発する上で、食材を生産する農業クラブ、食品加工を担う家庭クラブ、商標登録を行うビジネス系列が連携してきた。自前の加工設備を持ち合わせていないため、食品を加工できる環境が整っている八重山農林高で製造している。訪問の際、商品の製造に臨み、学校祭で販売してきた。

 昨年度、訪問した3年の先崎(せんざき)佑太さん(17)は「自分たちが育てたコメが、黒糖でおいしい紅芋ケーキになった」と振り返る。高校の紹介映像をパソコンで作成した3年の佐藤華那(かな)さん(17)は「小野高や福島県の震災について、八重山の方々に上手に伝えることができた」と感想を語る。

 八重山農林高の生徒が福島県にやってくるときは、石垣市を訪問した生徒が案内役を務めている。小針幸雄校長(54)は「東北と南国沖縄県と環境が大きく違う中、若い者同士はすぐに仲良くなる。訪問した生徒たちは、いろいろな経験を通し、成長している。今後も交流を発展させていきたい」と願う。小野町商工会の吉田代吉(だいきち)会長(68)は「遠く離れた高校生同士が協力し一つの商品を作り上げる物語が素晴らしい」とたたえる。今年も10月31日から生徒が石垣市を訪ねる。

▼学校間から地域間へ

 小野町の大和田昭町長(72)や農業・商業の民間事業者ら約20人が2月、石垣市を訪問し、特産品交流による「地域づくり協定」を締結した。官、民、学が連携し石垣市との交流を継続的に行い、地域協働連携を活発化させ、産業社会に対応する生徒の育成に関して、新たな展開が期待される。

(福島民報社編集局報道部・渡部純)

※次回は27日、岩手県の話題を紹介します。


●支える人たち「生徒の意見、刺激」「やり遂げ自信に」

渡辺和之さん

 小野町の中心部に、菓子店「シェフリー松月堂」がある。ご当地スイーツ「アイスバーガー」などで人気の店だ。後継者として菓子作りに精を出す渡辺和之さん(33)は、小野高と八重山農林高の6次化商品開発に協力している。

 小野町産のエゴマと、石垣市の黒糖を使った菓子を作れないか、との話が町や小野高からあった。すぐに思いついたのが、クッキーだ。「バトン」という商品がすでにあり、それにエゴマと黒糖を取り入れた。

 ともに香りの強い食材なので、配合する分量に苦労した。エゴマが多すぎると黒糖の良さが失われ、逆になるとエゴマ独特の風味が感じられない。生徒と一緒に試食を繰り返した。「高校生のアイデアや意見は面白く、刺激になった」と話す。

 福島と沖縄。気候も食文化も違う土地の連携は意義深いと受け止めている。「菓子だけでなく、他のものでもつながっていければいい。互いに盛り上がっていきたい」

尾形雄一さん

 小野高の尾形雄一教諭(41)は昨年度の石垣市訪問に同行した。準備段階から関わり、生徒にアドバイスを送った。

 生徒は訪問前、石垣市で販売するお菓子の試作を繰り返した。材料の配合を変えるなど試行錯誤した。「生徒は普段から何事にも真面目に取り組む。大変だったろうが、弱音を吐かず黙々と作業していた」と振り返る。

 現地訪問は3泊4日の日程だった。施設見学や製造実習、販売などスケジュールはびっしり。それをこなした生徒の表情は、充実感にあふれていたという。帰郷後、ある生徒の感想には「別れを惜しむほどの絆ができた」と書かれていた。「やり遂げたことが大きな自信になったようだ」と受け止める。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後、被災地はさまざまな支援を受けた。石垣市訪問の際も「福島の力になりたい」との声に触れた。「恩返しできるよう、手を取り合う関係を続けてほしい」と期待する。


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