日本の追い上げに声援を送る来場者=28日、弘前市のかだれ横丁

 優勝候補のアイルランドを破る大金星を挙げるなど、日本代表の活躍に国内が沸いているラグビーワールドカップ(W杯)日本大会。25日、東日本大震災で被災した岩手県釜石市で行われた一戦では、観客とともに選手が犠牲者に黙とうをささげる印象的な場面もあった。日に日に国内が盛り上がる一方で、東奥日報紙「あなたの声から『フカボリ』取材班」のパートナー社に「 『W杯歓迎』と掲げちゃダメって、変じゃない?」との声が寄せられた。大会名を使いたいのに制約が多いのは、なぜなのか。

 北海道ラグビー協会と北海道新聞社は7月、第1回大会から取材しているスポーツライター藤島大さん(58)の講演会を札幌市で開いた。タイトルは「ワールドカップ日本大会に向けて」の予定だったが「藤島大さん講演会」に差し替わった。同市のW杯担当者から「『ラグビーW杯』は避けた方がいい」と求められたからだ。藤島さんは6月に著書「序列を超えて。ラグビーワールドカップ全史」(鉄筆文庫)を刊行。講演名に「W杯」が入ると、藤島さんの著書の宣伝と解釈される恐れがあると判断したという。

 ここまで神経質になるのは、多額の資金を拠出するスポンサー企業の権利保護のため、大会名やロゴの無断使用が禁じられているからだ。主催するラグビーワールドリミテッドは、ロゴやマスコットなど21件を日本で商標登録している。飲食店やイベント会場で「ラグビーワールドカップ」と掲げるだけで、商標権侵害に当たる可能性がある。

 開催地ではない青森県はこれまで、やや盛り上がりを欠いていたが、日本-アイルランド戦が行われた28日、弘前市のかだれ横丁で「ラグビーワールドカップ2019日本大会・パブリックビューイング(PV)弘前」が開かれた。格上のアイルランドを破る番狂わせに、集まった150人は歓喜に酔いしれた。

 このイベントの開催に先立ち、主催者のNPO法人弘前サクラオーバルズは、事前に商標権の使用許諾を得た。同法人の広報担当者は「開催ポスターや告知物の掲示もあらかじめ許可をもらった。PVも放映権料を支払って上映しました」と説明。厳しい制約について「スポンサー保護の観点からみれば致し方ないのでは」と話した。

 大会名やロゴの無断使用は「アンブッシュ・マーケティング(不正便乗商法)」と呼ばれ、1984年のロサンゼルス五輪以降、国際スポーツ大会で規制、強化されてきた。こうしたルールについては、日本大会の組織委員会内部でも微妙に見解が割れる。

 法務部は「W杯を関連づけたり、想起させたりする広告・営業活動は該当する」とする一方、「大会が盛り上がればスポンサーの利益にもなる」(幹部)と柔軟な声もある。

 W杯開催地では、さまざまな工夫がみられる。

 釜石市では大会名やロゴを使わずラグビーのまちをPRできるよう、独自に「釜石ラグビー」のロゴをつくった。釜石まちづくり株式会社の下村達志事業部長は「釜石のロゴはW杯終了後も見据えた『ラグビーのまち』としての取り組みにつながる」と語る。

 神戸市では官民でつくる神戸観光局が、ラガーマン精神を想起させるキャッチコピー「One for KOBE KOBE for One」を考案。おもてなし事業を発信するサイトなどに使うが、「2002年サッカーW杯の時より規制は厳しいようだ」と担当者は漏らす。

 大分県も、独自のキャッチフレーズ「One Rugby、One Oita(ラグビーで大分を一つに)」を考案した。商標登録して民間にも無償でイベントや商品のパッケージに使うことを許容。W杯後も続けて使う考えだ。