昭和レトロな雰囲気が漂う「麦藁帽子」。1975年の創業当時から40年余り、店内はほぼそのまま変わっていないという=9月上旬、青森市新町

 「昔ながらのレトロな喫茶店をあまり見かけなくなりました。昔はもっとたくさんあったような」。東奥日報紙「あなたの声から『フカボリ』取材班」にこんな声が寄せられた。統計を見ると、確かに県内の喫茶店は全盛期の約30年前から4分の1近くに減っている。青森県内の経営者らに尋ねると、携帯電話の普及、コンビニやコーヒーチェーン店の台頭、ライフスタイルの変化などさまざまな要因が浮かび上がった。

 喫茶店の数はどう移り変わってきたか。

 国の統計調査によると、県内の喫茶店(コーヒーなどの飲料や軽食を出す事業所、カフェ含む)は1966(昭和41)年の152店から20年後の86(同61)年には10倍以上の1719店とピークを迎える。しかし、ここからは減少の一途。直近の2014年調査では458店で、ピーク時の7割以上の店が“消えた”計算だ。

 国全体でもこの傾向はほぼ変わらない。1981(昭和56)年の15万4千店をピークに今も減り続けている。ただ、減少割合は55%と青森県より緩やかだ。

 「喫茶店が減ったきっかけ? 携帯電話の普及じゃないですか」。青森市新町通り裏手にある「麦藁(むぎわら)帽子」の店主田澤裕一さん(48)は言う。

 「私がここで働き始めた30年前はだれも携帯なんか持ってない。待ち合わせと言えば喫茶店。当時は店のピンク電話が10円玉ですぐ詰まってしまうので、毎日よく(電話機を)振っていましたよ」と笑う。

 純喫茶に代わり、フードメニューが充実したカフェや持ち帰りがメインのコーヒーショップが増えているとも。「この数年、喫茶店離れを肌で感じている。ただ、最近はレトロな店が逆に新鮮だと言って来てくれる学生も出てきた。古いものを守っていくことに意味があると思って頑張っています」

 今年で創業90年の弘前市土手町の「万茶(まんちゃ)ン」。4代目店主の今川善宏さん(30)も「新しいカフェや大手チェーンの進出で競争が厳しい」と話す。時代とともに変わろうと努め「昔ながらの喫茶店は閉鎖的な雰囲気があったりして入りづらいイメージがあった。壁紙を変えて店内を明るくし、禁煙にもしました」。

 県内の喫茶店文化に詳しい県県民生活文化課・県史編さんグループ主幹の中園裕さん(54)は、喫茶店の減少について、コンビニやファミレスの台頭に代表される食文化の変化や、コミュニティーの希薄化など、時代の流れを指摘する。

 落ち着いた空間でクラシックやジャズなどの音楽をいい音で聞く、読書、インベーダーゲーム、仲間たちとの語らい…。長く喫茶店に求められてきたものは、コーヒーだけではなかった。たばこのイメージも強く、子どもは近づけない大人の空間だった。

 「昔は恋人同士の場所でもあった。店内が明るいと敬遠されることもあったと聞いています」と中園さん。「ファミレスなど、食事をする場所、手段は多様化した。若者が集まって熱く政治の話をするような世の中でもない。地域のコミュニティー意識も希薄になった。かつては会社の接待にも使われたが、今はそういう光景もなくなった」。喫茶店を取り巻く環境が大きく、加速度的に変化している。