■ すし職人/伝統の味と技でもてなす (2014年2月18日掲載)

「お待ちどうさまです」。客の反応を見ながら絶妙な間合いで握ったすしを差し出す工藤さん
 

 イクラ、マグロ、ウニ…。みんなの好きなすしは何かな? 今回紹介(しょうかい)するのは、日本伝統(でんとう)の味と技(わざ)を受け継(つ)ぐすし職人(しょくにん)です。客の目の前で手際(てぎわ)よく握(にぎ)る姿(すがた)は華(はな)やかですが、裏(うら)では大変な努力を積み重ねていました。

 青森市(あおもりし)堤(つつみ)の鮨(すし)「河庄(かわしょう)」で働く工藤(くどう)篤史(あつし)さん(31)は、働き始めて9年目です。料理好きだった工藤さんは22歳(さい)の時、それまでの仕事を辞(や)めてすし職人の世界に飛び込みました。

 すし屋で働くことは何より体力勝負です。朝早くから夜遅(よるおそ)くまでほとんどが立ち仕事で、仕込(しこ)み、接客(せっきゃく)、後片付(あとかたづ)け…と追われます。全くの素人(しろうと)だった工藤さんは一から勉強しました。店では30種類以上のネタを常備(じょうび)しており、それぞれの魚に合った扱(あつか)い方を覚えなければなりません。しゃり(酢飯(すめし))は、米の状態(じょうたい)などによって炊(た)き具合を加減(かげん)するなどの細やかさが必要です。店によって修業(しゅぎょう)の仕組みは違(ちが)いますが、工藤さんは1年目から仕込(しこ)みだけでなく巻物(まきもの)も担当(たんとう)しました。その後、徐々(じょじょ)に握りの練習を始めました。最初は、しゃりの大きさに成形した布(ぬの)を水でぬらしたもので感覚をつかみました。それでも、しゃりで実践(じっせん)したら米が手にくっつくなど苦労したそうです。

 カウンターに立っているとき工藤さんが心がけていることは、客に合ったすしを握ること。お年寄(としよ)りにはしゃりの量を減(へ)らしたり、食べやすいように切り込みを多く入れるそうです。また、子ども用にミニサイズのすしも握ります。全(すべ)ては客への思いやりです。また、楽しんで味わってもらうためには会話も重要です。でも、工藤さんは気を使いすぎて空回りすることがあります。最近は落語を聞いて、間合いなどを勉強しているそうです。

 親方は「心の修業ができていないと、技術(ぎじゅつ)は習得できない」と言います。それは相手を思いやる気持ちと、そのために自分を磨くことが基本(きほん)だということです。「やればやるほど、これでいいということはない。自分に負けず、人間味のあるすしを握りたい」。工藤さんは答えのない奥深(おくぶか)い世界で、これからも客の笑顔(えがお)を励(はげ)みに精進(しょうじん)していきます。


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