みなさんは「風評被害(ふうひょうひがい)」という言葉を知っていますか。「よくないうわさ」が立ってしまい、それで被害を受けてしまうことです。東京電力福島第1原発の事故(じこ)で、福島県内では放射性物質(ほうしゃせいぶっしつ)の被害によって今は人が住めなくなっている町があります。けれども人が普通(ふつう)に住んでいる地域(ちいき)にも「よくないうわさ」による被害が起きているのです。
青森市南中1年の清藤瑞生(せいとうみずき)君(13)ら、全国から集まった5人の中学生たちとお笑いコンビ「ロザン」の2人が、福島県会津若松市(あいづわかまつし)と会津美里町(あいづみさとまち)を訪(おとず)れました。
会津美里町は地震(じしん)の影響(えいきょう)はほとんどなかった町です。けれどもこの町の自慢(じまん)であるコシヒカリは、放射性物質を計測(けいそく)して安全であることが分かっても「福島のものだから影響(えいきょう)があるのでは」と思われることがありました。震災前(しんさいまえ)は60キロ約1万5千円だった値段(ねだん)が約1万2千円に下がってしまい、経費(けいひ)を差し引くと、農家は大きな痛手(いたで)を受けました。
コメの生産と加工を行う会社「米夢(まいむ)の郷(さと)」の工場長、猪俣道夫(いのまたみちお)さん(55)は「買う人に安心してもらうためには、正しい情報(じょうほう)を伝え続けなければなりません」と話します。
一方、会津若松市では震災の前の年に841校の小中高校生が修学旅行(しゅうがくりょこう)で訪(おとず)れていましたが、震災が起きた2011年には100校ほど、昨年も210校ほどでした。
どの学校でも、児童や生徒の親の中に福島への修学旅行に反対する人がいると、なかなか行くことができないのだそうです。
観光名所の一つである鶴ケ城(つるがじょう)を、解説ガイドの遠藤優貴(えんどうゆうき)さん(39)が案内してくれました。「ここを訪れたぼくたちは、何ができるでしょうか」という清藤君の質問(しつもん)に、遠藤さんは「会津はこんなすてきな場所だよ、すてきな人がいるよと友だちに伝えてください」と答えてくれました。
※文と写真・フォトジャーナリスト安田菜津紀(やすだ・なつき)