大間町(おおままち)は下北半島(しもきたはんとう)の北部にあり、本州でも最も北にある漁業の町です。夏が終わると、大間沖の津軽海峡(つがるかいきょう)ではクロマグロの漁が本格化します。漁師(りょうし)たちが町内の漁港(ぎょこう)に水揚(みずあ)げする大間マグロは、その貴重(きちょう)さと値段(ねだん)の高さから「黒いダイヤ」とも呼ばれ、全国にその名を知られています。
家族連(かぞくづ)れや若い女性のグループ、お年寄り夫婦…。秋の日曜日の朝、港にたくさんの人が集まってきます。お目当てはマグロ解体(かいたい)ショー。100キロ以上のマグロが手際(てぎわ)よく解体され、お刺(さ)し身(み)にするマグロのサクが飛ぶように売れていきます。
マグロは、日本の各地で一年中水揚げされています。なぜ大間のマグロがこんなに人気なのでしょうか。
日本近海(きんかい)のマグロは、えさになるサンマやイカを追(お)い掛(か)けて、日本列島沿(れっとうぞ)いに北上(ほくじょう)してきます。中でも、太平洋(たいへいよう)から北上するマグロは、北海道(ほっかいどう)や三陸沖(さんりくおき)からやってきたサンマなどをたっぷり食べて太り、大物(おおもの)のマグロに育つのです。さらに、津軽海峡を回遊(かいゆう)する10、11月ごろになると、マグロが脂肪(しぼう)を蓄(たくわ)えるため、最も脂(あぶら)がのる時期とされています。
大間のマグロ漁師は伝統漁法(でんとうぎょほう)の「一本釣(いっぽんづ)り」でも知られます。波が荒い津軽海峡で、命をかけて大物マグロと格闘(かくとう)する勇(いさま)ましい姿は「男のロマン」とたたえられ、テレビ番組(ばんぐみ)などで有名になりました。今年1月には、東京(とうきょう)・築地市場(つきじしじょう)の初競(はつせ)りで大間マグロ一本に1億5540万円という破格(はかく)の値(ね)がつき、多くの人を驚(おどろ)かせました。