「ふるさとでもどんどん歌っていきたい」と意欲的な松井さん=東京・秋葉原のスタジオ

 「芸術の道は長い。一生が挑戦ですね」

 八戸市出身の松井永太郎さん(34)=千葉県市川市在住=は二期会会員のバリトン歌手。今年はオペラ7公演以上、アンサンブルの出演も多い。「年中コンサート」といい、活躍の場が広がっている。

 両親とも音楽好きで、2、3歳のころからピアノを習い始めた。初めて聞いた曲をすぐにピアノで再現できたという。高校時代はバンドでベースを担当。クラシックやオペラにも関心があり、在籍校とは別の高校の音楽の先生と巡り会ったことで「自分が打ち込めるのは音楽だけだ」と決意。オペラ歌手を目指すため東京芸術大学に進んだ。

 現役合格で、少しは自信もあった。しかし、自分程度に歌える学生はごろごろいた。オペラ歌手になる厳しさは半端ないと強く認識した。「すると、悪い癖が出た。アンサンブルの歌手になろう、と考えを改めた。厳しさから逃げたんです」

 端役とはいえオペラの舞台にも上がっていたのに、本来の目標から目をそらした。もんもんとしていたある日、音楽を志していた女子高校生から進路の相談を受けた。真剣に答えたことが、自分の生きざまを見直すきっかけになった。「じゃあ自分はどうなんだ、と。本気で歌に取り組むため、自分を追い込んでみようと考え直した」。がむしゃらに歌い、少しずつ評価されるようになった。

 転機が訪れたのは27歳の時。推薦を受けて二期会の研修所に入所した。2年間、徹底的に自らを鍛え上げた。新人演奏家によるコンクールに出場し、最優秀賞に輝いたのは32歳の時。実力に実績が伴い始めた。

 ここまでたどり着いたが「自分にはまだまだ技術が足りない。それがはっきり見えた」という。ではどうするべきなのか-。目標も課題もしっかり見据えている。「もちろんオペラで舞台に立ち続けることが目標。そのため、未経験の海外研修にも行ってみたい」。常に挑戦する姿勢を忘れないよう、自らの気持ちを引き締める。

 7月には東京・駒込でデュオコンサート。8月には横浜市でオペラ「魔笛」に出演する。「オペラには声楽家の妻も出演します。ちなみに、むかし私に相談してきた女子高校生が妻です」。照れくさそうにはにかんだ。