「学ぶ人たちが満足し、成長していける場にしたい」と話す佐藤さん=横浜市の星槎大学大学院

 自身について「異端に見えるでしょうね」と屈託なく笑いながら話すのは、弘前市出身の佐藤智彦さん(39)=神奈川県在住。内科医として週3回、県内の医療機関で診療に当たる一方、星槎(せいさ)大学大学院(横浜市)で教授を務め、院生を指導している。

 異色なのは、教員の籍を置くのが医学研究科ではなく、教育学研究科である点。しかも取り組んでいるのは、指導力の高い看護教員や看護の現場で教育のできる人材の育成だ。

 同大大学院は2015年4月、通信制の看護教育研究コース(修士課程)を開設した。その際、中心的な役割を担った。「背景にあるのは深刻な看護師不足。その対応のため、看護大学や看護学部が次々できたが、今度は質の確保や教員不足という問題が出てきた」

 自身も診療の現場で共に働く看護師たちに思うところがあった。「医師の指示受けにとどまらず、他の看護師にアドバイスしたり適切な指導をするような、リーダー的な存在の看護師がもっと増えれば、と思っていた」

 弘前高校卒業後、東京大学医学部に進学。弘前大学の生化学教授だった父の影響もあり、臨床より研究に興味があった。「医療に貢献できるような研究ができたらいい」と漠然と考えていたという。

 臨床研修を経て、血液腫瘍内科・輸血学を専門とし、基礎研究と臨床に携わった。「次の道をどうしようか考えていた時、知り合いを通じて大学側からこういう構想があるという話をいただいた」

 豊富な経験を持つ看護師が学術研究に取り組み、能力を磨くことで、病院の中核となる人材が育ったら-。自身が現場で抱いていた思いと構想が一致した。「看護師を直接養成するのではなく、周りで支える人材の育成なので、長期的ではありますが、いずれ看護師不足の解消につながればと思っています」

 院生は主にベテランの看護師や看護教員。通信教育の利点を生かし、いずれも仕事を続けながら、北海道や九州など全国から参加している。今春、1期生の6人が修了した。

 「青森県からも入ってほしい。こういう形を通じて古里に恩返しできたらいいですね」