江森さんは日本児童文芸家協会の会員。同会発行の雑誌に掲載した短編の構想を膨らませ、今回の受賞作に結実させた

 児童文学を本格的に書き始めてから10年ほど。八戸市出身の江森(旧姓・前原)葉子さん(59)=千葉県在住=が、5話連作の「停車場通りのものがたり-みんな、生きた。昭和10年オムニバス-」で、本年度の小川未明文学賞(主催は新潟県上越市と同文学賞委員会)優秀賞に輝いた。

 受賞作の舞台は、北東北の港町。繁華街にある時計店とかかわりを持つことになる少年少女が、1話ごとに主人公を務める。三陸大津波に母を奪われ魚の行商で家計を助ける「きよ」13歳、家庭の事情で進学の夢をあきらめ時計修理工になった「みのる」15歳…。

 くじけそうになる彼らを励ましてくれるのは時計店のおかみさん。戦争の時代へ向かう世相の中、明日を信じて懸命に生きる姿を描いている。

 架空の設定だが、モデルにしたのは自身が生まれ育った八戸市番町の「マエバラ」と、創業者夫妻(曽祖父母にあたる前原寅吉さん・ナカさん)だ。

 「曽祖母は私が4歳の時に亡くなりましたが、一緒に暮らしていたので人柄はよく覚えています。在野の天文学者で目が不自由になった曽祖父を支え続けた。このおばあさんのことを書きたいと、ずっと思っていました」と江森さん。

 「私が小さいころの時計屋は、住み込みの職人も含め十数人が一緒に暮らしていた。時計や眼鏡の卸業者のほか、いろんな物売りも訪ねてきて、とにかくにぎやかでした」と振り返る。

 幼いころから自然に身についた人間観察眼。両親などから聞いたエピソードをつむぎ、フリーライターの仕事で鍛えた筆力でまとめ上げた。これまで他の作家との共著は数冊ある。「ぜひ自分の本が出せるよう頑張りたいです」とほほえんだ。

粘り強い南部人に敬意

 受賞作第1話の背景には昭和の三陸大津波が影を落とす。5年前の東日本大震災を意識した-と江森さん。「南部地方は昔から、ヤマセによる凶作や津波など何度も自然災害に見舞われたけれど、人々は粘り強く乗り越えてきた。3.11も大変でしたが南部の人たちは頑張っていける。そんな物語を書いていきたい」と静かに決意を語った。