接客する中村さん。「一対一の関係を大切にしたい」とアシスタントは雇っていない

 東京・渋谷にサロンを構えるヘアスタイリストの中村新一さん(37)=十和田市出身、渋谷区在住=は、世界の一流ファッションブランドが集うパリ・コレクションでヘアメークを手掛けた経験を持つ。「地方出身者でも、自分の好きな分野を伸ばせば、世界の舞台に立てる」。自力で夢の扉を開いてきた経験を伝え、故郷の後輩たちを勇気づける存在になりたいと望んでいる。

 19歳で原宿の美容室に就職。26歳で独立し、東京・南青山に開いたサロンには芸能人も通うようになった。キャリアを重ね、次の目標に選んだのがファッションモデルのスタイリングだった。

 「洋服に合わせた髪型をやってみたいと思って。ファッションといえばパリコレ。それでよし行こう、と」。2009年、31歳でフランスへ旅立った。

 とはいえ、フランス語も英語も話せない。働き口はもちろん、住む場所も未定。手元にはスーツケース2個とリュックサック、ホテルの予約は5日分だけ。「出発のとき、怖くて涙が出た」という。

 現地の美容師に片言の英語で頼み込み、アシスタントで働くことに。雑誌撮影用などのヘアメークを重ねて2年半がたったころ、ついにブランド「ディオール」のコレクションでデビューを果たす。

 華々しいステージの裏で、腕に自信のある美容師が集まるバックヤードの競争は激しい。「まず席を確保する。次にモデルを連れてくる。それができなければうろうろするしかない」。スタイリングの手本は本番前に一度しか示されず、モデルの髪質を見極めて整える。

 目標だったパリコレも経験し、13年に帰国。「もう一度、一般の方をきれいにしたい」と、15年2月に現在のサロンを開業した。

 目を引くような経歴を持ちながら、性格は飾らない。三本木農業高校を卒業後、八戸理容美容専門学校(八戸市)に進んだのは「単純に美容師ってかっこいいなと思ったから」と話す。

 「入ったときはノリだったけど、一般、芸能関係、モデルと求められるものが違って奥が深い。そこがおもしろいんです」