
ジムでスパーリングに打ち込む浅瀬石さん
幼いころから憧れていたキックボクシングへの熱意を抑えきれず、22歳で地元の会社を辞めて首都圏に移った。建築測量の仕事の傍ら、毎日ミット打ちやスパーリングで汗を流す。
「頑丈な体と運だけでここまできた」。にこやかに謙遜するが、リング上では目つきが変わる。11月15日に東京・後楽園ホールで行われたニュージャパンキックボクシング連盟ウェルター級タイトルマッチ。23歳の山崎遼太選手と空位だった王座を争った。
試合は浅瀬石さんのペースで進み、冷静に右フックやローキックをたたき込んだ。5ラウンドを終え判定で勝利。「35歳で覚醒した感じ。戦い方が分かってきた」。確かな手応えとともにチャンピオンベルトを巻いた。
これまでの戦績は35戦13勝19敗3分。「恥ずかしい成績」と頭をかくが、周囲の信頼は厚い。ジムの金子修会長(65)は「誰よりもスパーリングをやっている」と努力を認める。
長身選手が多いウェルター級で、浅瀬石さんは166センチ。リーチ差を埋めるべく体得したのが、飛び込んできた相手を迎え撃つカウンターだ。スパーリングパートナーの平山元樹さん(32)=弘前市出身=は「浅瀬石さんにしかできない戦い方」とたたえる。
日本王座を1回防衛すれば世界戦が見えてくる。「初志貫徹。青森を出たときの気持ちを忘れず頑張る」と浅瀬石さん。経験を力に、さらなる高みを目指す。
本県、素質ある人多く
「青森県は身体能力が高くて格闘技のセンスがいい人が多い」と熱っぽく語る。ボクシング世界2階級制覇の畑山隆則(青森市出身)、元K-1王者の小比類巻貴之(三沢市出身)、ムエタイ世界2階級制覇の一戸総太(鶴田町出身)…。「みんなすごい選手。ジムなど環境が整えば、世界レベルの選手がたくさん出るはず」と言い切った。